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第76話
どれくらい経ったのか、俺は目を開けてぼんやりとしていた。
「緋桜、起きた?」
ぼんやりとしていると、木崎がそう言って覗き込んでくる。
「………俺、寝てた?」
「30分くらい寝てたかな。着くまでもう少し掛かるし、まだ寝てても大丈夫だよ」
そう言って、木崎は笑った。
30分…………そういえば、あの夢見なかった。
そんな事を考えていると、手に何かが触れてる感触に気付いた。
視線を移すと、俺の手は木崎にしっかりと握られていた。
「ッ!なっ!?」
俺は慌てて握られた手を離す。
「な、なんで!?」
「ん?緋桜が俺の手に触れてきたから握って欲しいのかなって思って」
そう言って、木崎はニコッと笑った。
「緋桜、最初は眉間にシワ寄せてたけど、手を握ったら落ち着いたよ?」
「ッ!」
手を握られて落ち着くって、ガキみたいじゃないか!?
……………でも、そのお陰であの夢を見なかったんだ。
そういえば、もう少し掛かるって……
一体、どこに向かってるんだろう。
そう思って、俺は窓の外を見た。
今は高速を下りて、一般道を走ってるみたいだ。
俺は通り過ぎていく町並みを眺めていた。
…………あれ?
気のせいか?なんか見覚えがあるような………
俺は通り過ぎていく町並みを見たような気がした。
どんどん進んでいくと、更に見覚えがある町並みが並ぶ。
………ここって、まさか。
車が進むにつれて、その考えが確信に変わっていく。
……なんで!?なんで、ここに!?
車の進行方向には大きな霊園はあった。
車はその霊園に入っていった。
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