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第77話
辿り着いたのは、大きな霊園。
俺はこの場所をよく知っていた。
「……なん……で……」
身体が微かに震え始める。
なんで……
なんで木崎が俺をここに連れてくるの?
だってここは…………
「ごめん騙すような真似して。でも緋桜は今日、ここに来なきゃいけない」
………今日?
「……今日が……なんの日か……………知って……?」
「……今日は、冴木拓真の命日だ」
そう言う木崎に、体が揺れた。
「緋桜は事故の日から一度もここに来てないだろう?」
…………いやだ。
「悪いとは思ったけど、調べさせてもらった」
「……なんで……」
「緋桜をこの事から開放したいから」
……いやだ、ここには居たくない。
あの日から、二度と来ないと思ってた場所。
俺にここに来る資格はない。
だって、俺が奪ってしまったから……
「俺も一緒に行くから、ね?」
「………いやだ」
「緋桜」
木崎が俺の手を掴む。
「……いやだ……行きたくない」
そう言って、俺は掴む木崎の手を拒んだ。
「緋桜!!」
「いやだ!離せ!!」
俺は思わず木崎を突き飛ばしてしまった。
「いっ!」
突き飛ばした反動で木崎が後ろに倒れる。
ガンッと音がして、木崎が頭を押さえた。
「あ………」
俺は木崎の声で、ハッと我に返る。
「……き……」
俺は痛みで踞ってる木崎に手を伸ばす。
そんな俺を木崎が見てくる。
「緋桜」
俺の名前を呼んで見つめてくる、木崎の目が怖いと思った。
俺は伸ばしかけた手を引っ込めて、木崎から逃げるように車を飛び出した。
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