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第80話
「拓真の母親と………何話してたんだ?」
車の中から見てたら一瞬、木崎が怒ってるように見えた。
でも戻ってきた木崎は、どことなく嬉しそうだった。
「緋桜の事よろしくって言われた。あの人は、本気で緋桜の事心配してるよ」
「…………分かってる」
あの人はそういう人だ。
拓真が生きてた時もそうだった。
拓真同様、俺の事も心配してくれた。
だからこそ、あの時に言われた言葉が本心だと分かった。
『この疫病神!!あなたさえ居なければ!!』
あれはあの人の紛れもない本心。
心の何処かで思っていた事。
だから会いたくなかった。
あの人は優しい。本気で心配してくれてるのも分かってる。
でもそれを知ったら、期待してしまう。
その優しさに甘えてしまう。それは絶対にしてはいけないことだから……………
「………ごめん、緋桜」
「え?」
「今回、俺の勝手で緋桜に嫌な思いをさせてしまった………だから、ごめん」
そう言う木崎に俺は首を振った。
「木崎は俺の為にしてくれたことだから……
そのお陰で今回、あの人とも会ってまた話せた。でも今はまだ、俺の中で整理が着いてないんだ………」
あの時の事は、俺の中でまだ続いてる。
正直、整理が着くとは思えない。でももし、整理が着いたら
いつか整理が着いたら、その時は…………
「でも整理が着いたら、その時は自分でここまで来る」
自分がこんなこと思うなんて考えてもみなかった。
いつ整理が着くのか分からない。今はまだ拓真のとこには行けないけど、もしその時が来たら………
その時はまた…………
「……その時は……一緒に、来てくれるか……?」
そう言うと、木崎は驚いた顔をした。
俯き気味で言う俺に、木崎はフッと笑った。
「もちろん」
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