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第81話
(秋哉side)
ここ最近、また緋桜の様子がおかしい。
どことなく上の空というか、話しかけても聞いてないときがある。
こういう時は何かあったんだろうけど、緋桜はそれを話してくれない。
問題があっても一人で抱え込んでしまう。実際、今もそんな状態だ。
「緋桜」
俺は緋桜を呼んだ。でも緋桜からの反応はなかった。
今日もいつも通り、別館の屋上で一緒にお昼を取っていた。
俺は佐々木が作ってくれたお弁当、緋桜は購買で買ったパンを食べていた。
緋桜は買ったパンを手に持ったまま殆ど食べずにぼんやりしている。
「緋桜」
名前を呼んでも反応がない。
「緋桜!」
さっきより少し強めで呼ぶと、ようやく気付いたのか緋桜がビクッと揺れた。
突然呼ばれて驚いたのか、ちょっと戸惑った感じでこっちを見てくる。
「何かあった?」
そう聞くと、緋桜の顔が一瞬曇った。
「……何も」
そう言って、緋桜は俺から視線を外す。
まぁ返ってくる答えは予想はしてたけど。
緋桜からの返答は大抵『何もない』とか『大丈夫』と返ってくる。
もっと頼ってくれればいいのに。
俺はそう思いながら緋桜を見つめていた。
最近では何もないときは緋桜と一緒に帰るのが当たり前になっていた。
今日は残念ながら生徒会の会議が入っている。
緋桜には先に帰ってもらい、俺は生徒会室に向かった。
俺は生徒会室に向かう廊下を歩きながらため息をついた。
緋桜が何かよそよそしい。
さっきも先に帰ってもらうのに緋桜の教室に行ったら、緋桜はあまりこっちを見てくれなかった。
今までは話をするときはこっちを見てくれてたのに。
…………俺、緋桜に何かしたかな?
でも考えても思い当たる伏がない。
あるとすればこの間の事、俺が無理矢理緋桜を冴木拓真のお墓に連れていったことぐらいだ。
でも、それは緋桜も納得してくれたはず………
そんな事を考えながら、俺はまたため息をついた。
その瞬間、後ろから背中をバシッと叩かれた。
痛みに耐えながら後ろを振り返ると、佐倉先輩が立っていた。
「なーに辛気くさい顔してんの?」
「……佐倉先輩、痛いです。何するんですか」
「お前さぁ、負のオーラ出まくり。何かあった?」
先輩にそう聞かれて、相談してみようか正直悩んだ。
「まぁ、お前の事だから何かあるって言ったら中村の事だろうけど」
そう言って、先輩はニヤッと笑う。
……本当にこの人は、なんでもお見通しだな。
「で?実際のところ何があった?」
「それが俺にもよく分からなくて………」
「なんだよ、それ」
「最近、緋桜の様子がおかしくて。なんか上の空だし、たまに考え込んでるし、態度もなんかよそよそしいっていうか……」
「お前、なんかしたん?」
「そんな覚えないんですけどね」
「たまたま機嫌が悪かったとかじゃないのか?」
「………だと良いんですけど」
でも緋桜がああなる時は大抵良くないことを考えてるときなんだよな。
変なこと考えてなければいいけど…………
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