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第83話
(佐倉side)
「あ、中村だ」
廊下を歩いていると、窓の外を眺めてる中村を見つけた。
俺が声を掛けると、中村は驚いたようにこっちを向いた。
「秋哉が君の事ずっと探してるよ?」
そう言うと、中村は視線を逸らした。
「………知って、ます」
そう言って、中村はまた外に視線を移す。
「ふーん、知ってるんだ」
知ってるってことは、故意に秋哉から逃げてるわけか。
また秋哉がなにかしたのか………
そう思いながら、俺は中村が見てる視線の先に目をやった。
その先は学校の中庭で、そこには秋哉がいた。
……秋哉を見てたのか?
秋哉の様子からして中村を探してるんだろう。
あれ、だとすればこいつは………
「なぁ、なかむ………」
「すいません!俺、もう行きます」
「え、ちょっ!待っ!!」
中村は止める間もなく走っていってしまった。
………なんだったんだ?
「佐倉先輩!!」
中村が走り去った後、しばらくして今度は秋哉が走ってきた。
「緋桜、見ませんでした?」
「え………いや、見てない」
何となく言わない方がいいような気がした。
「……そう、ですか」
そう言って、秋哉は見るからに肩を落とす。
「なぁ、なんでここに来たんだ?」
「え?何となく緋桜がいる気がして」
そう言う秋哉に、俺は驚いた。
…………秋哉は勘が鋭いとは思ってたけど、ここまでとはな。
いや、すごいのは中村の方か?
中村は秋哉が来ることを察知して逃げたんだ。
「先輩?」
「あ、いや、何でもない」
俺がそう言うと、秋哉は首を傾げた。
「ところでさ、なんで中村は秋哉から逃げてんだ?」
「分かりませんよ、そんなの俺が知りたい」
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