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第87話
(秋哉side)
何気なく来てみた生徒会室。
こんなとこに緋桜がいるとは思ってなかったけど、ふと思い立って来てみた。
ドアの前に立つと、中から微かに話し声が聞こえてきた。
よくは聞こえなかったけど、二人いるみたいだった。
一人は佐倉先輩か……?もう一人は誰だ?
邪魔するのは申し訳ないから、そのまま立ち去ろうとした。
『おい、中村!?』
その瞬間、中からそう佐倉先輩の声が聞こえてきた。
緋桜!?緋桜がいるのか!?
そう思って、俺は思い切りドアを開けた。
ドアを開けて目に入ってきたのは、緋桜に覆い被さってる先輩の姿。
先輩の下にいる緋桜は、泣いて震えている。
「っ!?あんた、なにしてんだ!?」
そう言って、俺は先輩の胸ぐらを掴んで緋桜から引き離した。
「ちょっ!?落ち着け!何もしてないから!」
そう言って、先輩は慌てて弁解した。
「……すいません、先輩にも迷惑かけちゃって」
先輩の説明で状況を理解した俺は、そう言って先輩に謝る。
「いや、まぁ…誤解されるような状況を作ったのは俺だからな」
先輩はそう言うと、『それより』と緋桜に視線を向けた。
緋桜はいまだに体を縮めて震えている。
俺はそんな緋桜の前にしゃがんだ。
「緋桜」
声を掛けると緋桜の身体がビクッと揺れる。
「緋桜、もう大丈夫だから」
俺は緋桜には触れず、出来るだけ優しく声を掛けた。
「……木崎………」
少し落ち着いたのか、ようやく緋桜と目が合う。
それでも、その表情にはまだ怯えが残っていた。
「俺はもう行くから……お前らはちゃんと話しろよ」
先輩は緋桜には近付かないように、俺にだけそう声を掛ける。
「すいません」
そう言うと、先輩は小さく手を振って部屋を出ていった。
残された俺たちの間に沈黙が流れる。
「緋桜」
どれくらい経ったのか、俺が名前を呼ぶと緋桜は目を逸らす。
「緋桜」
もう一度名前を呼んでも緋桜はこっちを見ない。
それどころか、しきりにドアの方を気にする。
この状況でも、緋桜は逃げようとしてるのか。
「緋桜、なんでこっち見ないの?」
そう言っても、緋桜は俺を見ようとしない。
「なんで俺の前から居なくなったの?」
そう聞いても、緋桜は黙ったままだった。
「……………俺の傍に居たくないほど、俺のこと嫌いになった?」
そう言った瞬間、緋桜の体が揺れる。
「俺、緋桜に嫌われること何かした?……ねぇ、何か言ってよ」
それでも緋桜は黙っていた。
「…………なんで、何も言ってくれないの?」
俺は緋桜の腕を掴んだ。
その瞬間、緋桜が体を引く。
「何か言ってよ、言ってくれないと分からないよ」
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