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第91話
(秋哉Side)
俺が好きだと言うと、緋桜は信じられないという顔をした。
それもそうか………緋桜は誰かに好意を向けられるのは初めてだから。
緋桜にとって、他人の口から出る言葉は悪意しか含まれてなかった。
信じられないのも仕方ない。
でも、俺も引くわけにはいかなかった。
正直、俺も告白するなんて生まれて初めてだ。
今まで、告白はされるものだと思ってた。
でも、緋桜の場合は待ってたら緋桜は居なくなってしまう 。
それは絶対に嫌だった。
追っても逃げるし、追わなくても逃げる。
だったら捕まえるしかないじゃないか。
正直、長期戦を覚悟してた。
でも緋桜から返ってきた言葉は、俺も予想してなかった。
『俺も……木崎が……好きだ……』
呟くような小さい声だけど、ハッキリと聞こえた言葉。
緋桜の声で、緋桜から発せられたとは思えない言葉。
てか俺、今緋桜に抱き締められてる!?
最初に緋桜を抱き締めたのは俺だけど、緋桜が抱き締め返してくれるとは思わなかった。
今の緋桜は信じられない行動ばかりする。
それも俺に都合よく。
俺はふとある考えが浮かんだ。
「………夢?」
そうだ、今の状況はあまりにも俺に都合良すぎる。
「そうだ、そうに違いない。緋桜が俺を好きだなんて言うはずがない」
これは俺が作り出した夢だ。
そう思ってると、いきなり両頬に衝撃が走った。
ハッとして、目の前に視線を向ける。
そこには緋桜の顔があって、なんだか怒ってるみたいだった。
「…………夢じゃない」
そう言って緋桜はキッと睨んできた。
「………確かに言った。俺は木崎が好きだ」
それだけ言うと緋桜はフイと顔を逸らした。
でもその顔は真っ赤になっていた。
『俺は木崎が好きだ』
確かにそう言った。
緋桜が俺を好きだって言った。
俺は思わず緋桜を抱き締めた。
「本当に夢じゃないよな?確かに緋桜は俺を好きって言ったよな?」
俺がそう聞くと、緋桜は抱き締め返してきて、また『好きだ』と言ってくれた。
正直、まだ信じられない。
でも、それよりも緋桜が『好きだ』と言ってくれたことが俺はすごく嬉しかった。
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