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第92話

(秋哉side) 緋桜と抱き締めあってると、突然ガチャっとドアが開いた。 俺たちは慌てて身体を離して、何も無かった風を装った。 「あれ?会長、まだ残ってたんですね」 入ってきたのは日向先輩だった。 日向先輩は緋桜に気が付くと、緋桜に向けて笑った。 「あぁ、中村くんも一緒だったんですね」 そう言って先輩は緋桜に挨拶をした。 「日向先輩はどうしたんです?」 「荷物を置きに来ただけですよ。俺も、もう帰りますし」 「そうですか」 そう言って、先輩は奥にある机に書類を置く。 「あ、そうだ。会長」 部屋を出ていこうとした日向先輩が、俺を手招きして呼んだ。 「どうしたんですか?」 呼ばれて先輩に近寄ると、日向先輩はニコッと笑った。 「会長、おめでとうございます」 「え!?」 「良かったですね、無事に気持ちが届いて。あぁ、でも、相手の告白を夢にするのはどうかと思いますよ」 そう言って、先輩はニヤリと笑いながら部屋を出ていった。 「っ!?……あ、あんた、一体どこから見てたんだーー!?」 俺が叫ぶと、ドアの向こうから笑い声が聞こえてきた。 日向先輩が出ていってしばらく、俺は「あー!!」と奇声を発して頭を抱えて踞った。 日向先輩に見られてたとか、恥ずかしすぎて死ねる。 あの人……いや、あの人"たち"は絶対後でからかってくるに違いない。 「……き、木崎?大丈夫か?」 踞ってしまった俺を、緋桜がそう言ってオロオロとする。 俺は少し考えた後立ち上がると、緋桜の手を掴んだ。 「緋桜、帰ろう!一刻も早く帰ろう!ここにいたら、また誰か来るかもしれない」 そう言って俺は緋桜の手を引いた。 「あ、あぁ………」 緋桜は呆気に取られながら頷くと、手を引く俺に素直に着いてきてくれた。

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