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第108話

「緋桜、ごめんって!」 学校が終わって帰ろうとする俺に秋哉は必死に謝ってくる。 「あれは先輩たちが言い出したことで、俺には止められなかったんだよ」 「でも秋哉も署名したんだろ?」 俺がそう言って少し睨むと、秋哉はしょぼんとする。 「……それは、そうだけど」 そう言って秋哉は項垂れた。 なんでこんなことになってるかは、遡ること数時間前の昼休み。 呼び出されて生徒会室に向かった俺は、信じられないことを通達された。 ◇◇◇◇◇◇ ー 数時間前 ー 「呼び出して悪かったね」 そう言ってなぜか生徒会長の座る椅子に座っている佐倉先輩がニコッと笑う。 その回りに宮藤先輩と日向先輩、それに生徒会長のはずの秋哉が立っていた。 「……………なんの、用ですか?」 俺がそう聞くと、佐倉先輩は更ににっこり笑う。 その笑顔を見て、俺は嫌な予感しかしなかった。 「中村には、今日から書記になってもらうから」 唐突にそう言って佐倉先輩は何かの書類を差し出してきた。 「………は?」 受け取った書類には『中村 緋桜を今日付けで生徒会書記に任命する』と書かれていた。 その下には、生徒会全員の署名と理事長の署名もしっかり書かれている。 「今日から中村も俺たち生徒会の仲間入りだよ」 そう言って笑う佐倉先輩に、俺はついていけなかった。 「……あの…これ、断ることって……」 「無理だね」 何となく無理だとは分かっていたけど、一応聞いてみるとあっさりと無理と言われた。 俺は困って秋哉を見ると、秋哉は俺が視線を向けた瞬間目を逸らした。 その反応に本当に無理なんだと分かって、俺は承諾せざる終えなかった。 で、現在に至る。 「俺のことは、秋哉も知ってるだろ?」 俺の運の悪さは、他人を傷付ける。 生徒会に入ったりしたら、それこそ迷惑が掛かる。 それに生徒会に入れば、人と接する機会が増える。 俺はあまり他人とは関わりたくない。 「緋桜が何を心配してるのかは分かるけど、あの人たちは大丈夫だよ」 そう言って秋哉はニコッと笑う。 「あの3人は緋桜の事を知ってるよ」 「え?」 「緋桜には悪いと思ったけど、俺があの3人に緋桜の事を話した」 「…どう、して」 あの3人が知ってる? 俺が疫病神って呼ばれてたことも? 「あの3人は信用して大丈夫だよ。それは俺が保証する」 「……そんなの、分からない」 そう言って俺が首を振ると、秋哉がそっと俺の頬に触れてきた。 俺はその手にビクッとしてしまう。 あっと思って秋哉を見ると、秋哉は困ったように笑う。 「怖いのは分かるけど、少しの間だけやってみない?本当に嫌だったら辞めればいい」 そう言って笑う秋哉に、俺は少し胸が痛くなった。 秋哉のことは信じてる。 だから、あの3人は大丈夫と言う秋哉の言葉も信じたい。 けど、秋哉以外の人を信じるのは怖かった。 信じて、また裏切られるのは怖い。 それでも少しだけ、やってみようと思った。

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