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第113話
ガシャンと音がして手に持っていたカップが落ちる。
その拍子に中に残っていたコーヒーが床に溢れた。
「……え?」
どうしてカップが落ちたんだ?
ちゃんと持ってたはずなのに……
俺はなぜカップを落としたのか理解出来なくて自分の手を見る。
その手は震えて感覚が無くなっていた。
訳が分からなくてパニックになってると、緋方がクスッと笑った。
「やっと薬が効いてきたみたいだね」
そう言って緋方はクスクスと笑う。
緋方を見ると、見たことのない顔で笑っていた。
「……くす、り……?」
そう言われて俺はハッとした。
もしかしてコーヒーに?
そう思って俺は溢れたコーヒーに目を向ける。
「気付いたみたいだね」
緋方はそう言ってクスクスと笑いながら立ち上がると、ゆっくりと俺の方に歩いてくる。
俺は近付いてくる緋方が怖くて逃げようとした。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。ちょっと身体が動かなくなるだけだから」
そう言って緋方はクスクスと笑いながら近付いてくる。
俺は緋方から逃げようとするけど既に薬が回ってきてるのか、身体に力が入らない。
俺は身体を支える事が出来なくて、その場に倒れ込んだ。
倒れ込んだ俺の横に緋方が腰を下ろす。
緋方はじっと俺を見下ろした。
「……ど…して?」
そう聞くと、緋方は俺の頬に手を伸ばす。
嫌だと思ってその手を避けようとしても身体が思うように動かない。
「……兄さんが悪いんだよ」
そう言って緋方は俺の頬に手を添える。
その瞬間、ゾワッとした感覚が身体を駆け抜ける。
嫌だ、怖い……
そう思うと身体が震えた。
そんな俺を見て、緋方はクスッと笑う。
「兄さんが悪いんだよ。僕に嘘なんてつくから、僕に内緒で友達なんて作るから。
……だから、これは兄さんへのお仕置きだよ」
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