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第114話
(秋哉side)
緋桜が緋方と行ってからしばらくして、佐々木が戻ってきた。
「すいません、お待たせしました」
佐々木は少し息を切らせながら車の運転席に乗り込む。
「どうだった?」
そう聞くと、佐々木は俺に書類を渡してきた。
「秋哉さんの言ってた通りです」
そう言いながら佐々木はエンジンをかけて車を走らせた。
佐々木は俺が次にどこに行きたいのか分かってる。
俺は何も言わずに佐々木から渡された書類に目を通した。
俺が佐々木に頼んだのは、中村緋方の身辺調査。
緋桜の弟だってことは分かってる。
けど、緋方に対する緋桜の怯え方は尋常じゃなかった。
それに、緋方の俺を見る目が気になった。
あれは俺を不審がってとか、そんなんじゃない。
あれは憎悪だ。
緋方とは初めて会ったし、憎まれる覚えもないけど……
原因は緋桜しか思い浮かばなかった。
さしずめ、大好きな兄に集る(たかる)悪い虫ってとこか。
俺は渡された書類に書いてある内容を読んで眉を寄せる。
「佐々木、ちょっと急いでくれるか」
ここに書いてある事が本当なら、緋桜が危ないかもしれない。
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