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第116話
緋方は何かの液体が入った注射器をケースから出して俺の前に差し出す。
俺はそれを見て、一気に血の気が引いたのが分かった。
「……っ……なに、それ……」
注射器の中に入っている液体が何かは分からないけど、それが良いものでないのは分かる。
「大丈夫だよ、身体に害のあるものじゃないから」
そう言って緋方はニコッと笑う。
「暴れないでね、危ないから」
そう言って緋方は注射器の中の空気を抜くと、俺の首筋にそれを近付けた。
「嫌だ………」
逃げたくても逃げれなくて、抵抗したくてもそれが出来ない。
俺はただ、緋方のすることを見てるしか無かった。
首筋に針が刺さってチクッとする。
「うっ」
その痛みで思わず声を出すと、緋方は少し心配そうに見てくる。
「兄さん、ごめん痛かった?すぐだからちょっと我慢してね」
そう言って緋方は注射器の中身を俺に入れる。
俺はその感覚に涙が出た。
少しすると、針が抜ける感覚がした。
「終わったよ」
そう言って緋方は俺の頬にキスをする。
その瞬間、身体がビクッと跳ねる。
緋方は『すぐに効いてくるから』と言って笑う。
俺は何を打たれたのか分からなくて、怖くて身体が震えた。
……身体があつい。
緋方に薬を打たれてから、時間が経つごとに身体が熱くなる。
心臓がドクドクと鳴って、呼吸が苦しくなる。
そんな俺を見て、緋方はクスクスと笑っていた。
「効いてきたみたいだね」
緋方は俺に『どう?』と聞いてくるけど、俺にはその質問に答える余裕はなかった。
段々と身体が熱くなって、その熱が下半身にも集まっていくのが分かる。
「辛そうだね」
そう言って緋方が俺の身体に触れた。
その瞬間、ビリッと電流が流れるような刺激が身体を突き抜けた。
「ひぁ!?」
ビリビリとして、身体が震える。
何、今の……?
「いい反応だね」
そう言って緋方はまた触ってくる。
「…ッン……や……やめて……」
気持ち悪い筈なのに、触られるのが嫌な筈なのに……
それなのに、緋方に触られる度に身体が反応する。
「や、めて……も……やだぁ」
嫌で嫌で仕方ないのに、それでも反応してしまう自分の身体が嫌で涙が出た。
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