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第130話
「緋桜、機嫌直してよ」
そう言って秋哉が泣きついてくる。
別に怒ってるわけじゃない。
ていうか、本当はもう気にしてない。
ただ、急に秋哉と顔を会わせるのが恥ずかしくなった。
それは部屋に戻るとき、ふと窓に映った自分の姿を見たとき。
というよりは、首筋についた赤い印を見たとき。
それを見て、あの夜の事を思い出した。
あの夜、俺は初めて秋哉と身体を繋げた。
それまででも一歩手前まではあったけど、その先には進めなかった。
それは、俺が怖がったから。
でも、あの時は俺から強請った。
それもまた恥ずかしい。
あれだけ嫌がっておいて、俺から強請るなんて。
そう思うと、顔が熱くなった。
でも、あの時はどうしても秋哉のものになりたかった。
今を逃したら次のチャンスなんて来ないんじゃないかと思った。
チラッと秋哉を見る。
秋哉は俺がまだ怒ってると思って落ち込んでいる。
恥ずかしいけど、嬉しかったんだ。
秋哉が俺を求めてくれたこと。
何も無い俺を必要としてくれたこと。
ここに居て良いって言われてるようで嬉しかった。
俺は落ち込んで項垂れてる秋哉の首に腕を回した。
秋哉がそれに驚いて俺を見る。
俺はそのまま、秋哉の額にキスを落とした。
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