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第131話
(秋哉side)
何が起きたのが分からなかった。
緋桜を怒らせてしまって、どうしたら緋桜の機嫌が直るんだろうと考えていると、急に緋桜が抱き付いてきた。
どうしたのかと思って顔を上げると、緋桜の顔が近付いてきて、額に何か柔らかいものが触れた。
離れた緋桜の顔が目に入る。
緋桜と目が会うと、緋桜は少し頬を赤らめながらフイッと視線を逸らす。
「……別に、もう怒ってないから」
そう言うと、緋桜は離れようとする。
俺はそんな緋桜をひき止めた。
緋桜の腰に手を回して引き寄せる。
お互いの身体が密着すると、緋桜は一瞬何が起きたのかという顔をする。
次の瞬間にはカァと顔を赤くした。
緋桜を向い合わせで膝に座らせると、腰に回した手はそのままでがっちりホールドする。
緋桜はそこから逃げようと必死にもがいていた。
さっきは自分からしてきたくせにと思いつつ、顔を赤くして若干涙目になって逃げようとする緋桜は可愛い。
「緋桜」
名前を呼ぶと、一瞬だけ抵抗が弱まる。
「ねぇ緋桜、さっきのもう一回やって?」
そう言うと緋桜が固まる。
「……やだ」
緋桜は目を合わせないままボソッと呟く。
でもその顔は真っ赤だ。
「えー、やってよ」
「……やだ」
『やだ』の一点張りでこれ以上はまた怒っちゃうかなと思った。
そう思いつつも、『ちぇー』っと拗ねてみた。
本当はもう一回緋桜からキスしてほしかったけど、可愛い緋桜が見れたから良しとするか。
そう思っていると、額にまた柔らかいものが触れた。
驚いて緋桜を見ると、緋桜は顔を真っ赤にして涙目で睨んでくる。
「…これで満足か」
そう言って緋桜をまた視線を逸らす。
あぁ本当、なんでこんな可愛いのかな。
「…だめ、まだ足りない」
そう言って俺は、緋桜の顔を自分に向かせると、その唇にキスをした。
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