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第133話
(秋哉side)
「ところで、緋方に嫌われてるって思ってたなら、なんであの時緋方についてったの?」
そう聞いた瞬間、緋桜の身体がピクッと揺れた。
ちょっとした疑問だった。
緋方が学校に来た時の緋桜の怯え方は尋常じゃなかった。
にも関わらず、緋桜は緋方に従った。
それが不思議で仕方なかった。
緋桜は黙ったまま、微動だにしない。
話したくないなら無理に聞こうとは思わないけど………
「………緋方が………何するか、分からなかったから」
しばらく黙ってた緋桜がボソッと呟く。
「…俺が、言うこと聞かないと……緋方は秋哉に、矛先を向けるから……」
そう言って緋桜は俺の服をキュッと握る。
「俺が…少しの間だけ我慢すれば緋方は、満足……するから…」
そう話す緋桜に、俺は驚いた。
じゃあ、緋桜は俺の為に緋方と……?
俺を緋方から守るために?
そう思った瞬間、感情が膨れ上がった。
「馬鹿じゃないのか!?なんでそんな事!!」
そう叫んで緋桜の肩を掴む。
その瞬間、緋桜の顔を見て自分の行動に後悔をした。
緋桜は身体を震わせて怯えた表情を見せる。
「…ぁ…ごめん………俺……」
消えそうな声でそう言う緋桜は今にも泣きそうだった。
俺は気持ちを抑えるために息を吐く。
緋桜はそれにさえビクついた。
「……緋桜」
名前を呼んで緋桜の頬に手を伸ばす。
その瞬間、緋桜は目をギュッと閉じて身体を強ばらせた。
俺は触れようとしていた手を止めた。
完全に怯えさせてしまった。
せっかく緋桜が身を委ねてくれてたのに。
「……ごめん、怒ってるわけじゃないんだ」
そう言って緋桜の頬に触れようとして止めた手をもう一度近付ける。
今度はそっと緋桜の頬に触れた。
触れた瞬間、緋桜の身体にまた力が入る。
「ごめん、怖がらせるつもりじゃなかった。
………俺が嫌だったんだ」
そう言うと、緋桜がゆっくりと目を開けて俺を見た。
その目にはまだ怯えが残っている。
「……嫌?」
恐る恐ると緋桜が聞いてくる。
俺はそれに頷いた。
「俺のせいで緋桜が傷つくのは嫌だ」
そう言って緋桜を見ると、怯えは残ってるものの、ちゃんと俺を見てくれた。
「お願いだから、俺の為に自分を犠牲にしないで。今回は無事だったけど、緋桜に何かあったら俺は正気ではいられなくなる」
そう言って緋桜を抱き締める。
「緋桜が俺を守りたかったように、俺も緋桜を守りたい。だから、一人で抱え込まないで」
俺がそう言うと、緋桜はギュッと服を掴んで顔を俺の肩に擦り寄せる。
「……うん………ごめん」
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