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第136話

(秋哉side) この部屋に来て5分くらい話してたら、やっぱり疲れてたのか、緋桜は俺の肩に頭を置く。 これも最近の緋桜の変わったところ。 以前より素直に甘えてくるようになった。 前なら辛くても我慢してたんだろうなと思う。 「でも、どうしてそんなに疲れるまで皆の相手をしたの?」 俺にもたれ掛かってグッタリしてる緋桜に聞いてみる。 そう聞くと、緋桜はチラッと俺を見て、考える素振りを見せた。 「……前より、皆の顔が見えるように、なったから」 そう言う緋桜に、俺は意味が分からなくて頭にハテナマークが浮かぶ。 「…どういう意味?」 「……前は、人の顔を見るなんてしなかったんだ。話しかけられても、適当にあしらってた」 そこまで言うと、緋桜は少し俯く。 「………この前……秋哉と、その……したとき……秋哉、俺のこと……欲しがって、くれただろ……?」 「……あ、うん………」 改めてそう聞かれるとかなり恥ずかしい。 緋桜を見ると、緋桜の顔も真っ赤だ。 「……それに、俺が答えたら……秋哉、嬉しそうだったから……他の人も、そうなのかなって……」 『だから少しでも答えられたら』と緋桜は言う。 これは今まで人を避けてきた緋桜の中での大きな変化。 そんな緋桜に自然と笑みが溢れる。 「でも、ちょっと頑張りすぎかな」 そう言って俺は緋桜の頭を撫でる。 「焦らなくていい。ゆっくりで良いんだよ」 俺がそう言うと、緋桜はコクンと頷いた。 話してると、緋桜はいつの間にか寝てしまった。 俺はそんな緋桜をベッドに横にすると、起こさないようにそっと部屋を出た。 腕時計を見ると、何気に時間が経ってることに気付く。 俺は急いで生徒会室に戻った。 生徒会室のドアを開けようとして、俺はふと手を止めた。 先輩たちには、仕事に取り掛かっていて下さいって言っておいたけど…………やってないよな。 そう思うとため息が出た。 ドアを開けると案の定、3人が固まって何か話してる。 3人は入ってきた俺に気付くと、ニヤニヤしながら近寄ってきた。 佐倉先輩と宮藤先輩に手を引かれ、日向先輩に背中を押される。 ぐいぐいと引っ張り押され、俺は椅子に座らされた。 そんな俺を3人が取り囲む。 正直、嫌な予感しかしなかった。 「で?」 なんの前触れもなく佐倉先輩がそう言う。 「……何がですか?」 「とぼけんなよ」 そう言って佐倉先輩はニヤッと笑う。 「お前らヤったんだろ?」 そう言われて、俺は噎せてしまった。 「っ!なっ!?何で!?」 俺の反応で3人の中で確信に変わったらしく、佐倉先輩が二人に『な?だから言っただろ』と言って、宮藤先輩は『キャー』と奇声を上げ、日向先輩はため息をつく。 俺はその状況についていけなかった。 「まぁ、それは良いとして」 と佐倉先輩がそう言ってパンと手を叩く。 ……散々人の事を弄っておいて、この人は。 俺は3人に色々と質問責めにあった。 『どうやって』とか『どうだった』とか、答えづらいことばかり聞いてきて戸惑う俺の反応を3人はしこたま堪能した。 それに満足したのか、あっさりと話題を変える先輩に若干怒りが沸いた。 「中村、少し雰囲気変わったな」 さっきまでニヤついてた佐倉先輩が真剣な顔で言う。 「やっぱりエッチすると変わるって本当なんだな」 真剣な顔していたのも束の間、佐倉先輩はそう言ってまたニヤッと笑う。 俺はそれで色々諦めた。 「そういうこと、緋桜には言わないで下さいよ?」 俺が少し呆れ気味に言うと、佐倉先輩は『分かってるって!』と手をプラプラさせながら言った。 「でも中村の雰囲気が変わったってのは本当だぞ?」 そう言って佐倉先輩の顔がまた真剣さを取り戻す。 「そうね、私たちの話もちゃんと聞いてくれてたし」 宮藤先輩がそう言いながら、緋桜のいる部屋の方角を見る。 「近付くと引いてたのが、今日はそれがあまり無かったですね」 と日向先輩が言う。 この人たちは、ふざけてるようで人の事をよく見てる。 緋桜の変化にもこうやって気付く。 そういうとこは素直に凄いと思った。

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