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第140話
(秋哉side)
緋桜に街に出ることを提案してみたけど、やっぱりまだダメみたいだった。
あわよくば前回のリベンジと思ってたけど……
緋桜の中で『誰かと街に出る』ってことは一番のトラウマ。
大切な友人が事故で亡くなったことで、緋桜は自分のせいだとずっと自分を攻め続けていた。
少しは解消されたかと思ってたけど、やっぱりまだ無理みたいだ。
前回みたいに強引には連れ出せるけど、それは緋桜の負担になるだけだ。
出来れば、緋桜には楽しんでほしい。
だから俺は、緋桜にどこに行ってみたいか聞いた。
『どこに行きたい』と聞くと俺の好きなところでいいと返ってくるから、俺はあえて『どこに行ってみたい』と聞いた。
緋桜だって行ってみたい場所や気になる場所くらいあると思った。
そう聞いたら、緋桜から『ゲームセンター』と返ってきた。
「……ゲームセンター?もしかして、行ったことないの?」
そう聞くと、緋桜は少し頬を赤らめて頷く。
「気にはなってたけど、行く機会がなくて……」
『秋哉には子供っぽいかな』と少し不安そうに言う。
「いいよ。次の休みゲームセンターに行こう」
そう言って微笑むと、緋桜の表情が柔らかくなる。
最近分かった、まだ笑うことの出来ない緋桜の不器用な"笑顔"。
その顔を見ると、俺も嬉しくなった。
ただ行き先がゲームセンターに決まったはいいけど、実は俺も数回くらいしか行ったことがない。
どこがいいのかとか分からないし、明日先輩にでも聞いてみようかなと思った。
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