145 / 452
第142話
(秋哉side)
『緋桜と二人がいい』そう言ったら緋桜は顔を赤くして俯いてしまった。
……俺、何か変なこと言ったか?
そう思っていると、佐倉先輩が俺の肩に手を回してくる。
「お前さ、あからさますぎ」
そう言うと、先輩は『ちょっと来い』と言って俺を引っ張る。
「中村、悪いけど少し秋哉を借りるな」
「え…ぁ…」
緋桜も戸惑いを隠せない。
俺も突然のことで何も出来ず、先輩に引きずられていった。
「……何なんだ」
皆から少し離れたところまで連れていかれると、佐倉先輩はヒソヒソと話始める。
「お前さ、こういうとこあんま来たことないだろ?」
「それが何?」
「俺たちがフォローしてやるって言ってんの!」
「…必要ないですよ」
「バッカだなぁ、こういうとこで失敗すると恥ずかしいぞ?相手が出来ないことをさりげなくやれば『すごーい』ってなるだろ?ここはそういうのに持ってこいの場所だ!」
………何を言ってるんだ、この人は。
「お前だって中村に格好いいとこ見せたいだろ?それに、中村だってお前以外の人と交流してかなきゃ!」
先輩にそう言われて、チラッと緋桜を見る。
緋桜は宮藤先輩と日向先輩と何か話している。
表情はあまり変わらないけど、心なしか楽しそうに見える。
先輩が何を言いたいのかは分からないし、いろいろと腑に落ちない。
ものすごく腑に落ちないし、丸め込まれた感が半端ない。
でも緋桜が楽しそうなら、まぁいいかと思ってしまった。
そう思って俺はため息をつく。
「……分かりました。でも今回だけですよ」
そう言うと、先輩は『分かった、分かった』と笑う。
しばらく話して皆の所に戻る。
「……緋桜、皆で遊ぶ事にしたから」
そう言うと緋桜はキョトンとする。
「え……うん、分かった」
そう言って緋桜はコクンと頷く。
その横では佐倉先輩が二人に『秋哉は話せば分かる奴だよな!』とか言って3人に盛り上がってる。
俺は何かすごく負けた気がして、またため息が出た。
ともだちにシェアしよう!