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第144話
(秋哉side)
気を取り直して、俺たちはゲームセンターの中に入っていった。
中に入るとそこは結構広くて、うるさいくらいに色んな音が鳴り響いている。
一通り見て回ると、クレーンゲームやシューティングゲーム、音楽ゲームや小さい子どもが好きそうなアニメのキャラクターを象った乗り物まである。
緋桜を見てみると、物珍しいのか辺りをキョロキョロと見回していた。
「あっ!秋哉、あれやろうぜ!」
と佐倉先輩が俺を掴む。
「私はあっちがいい!」
と宮藤先輩が違う方を指差す。
「俺はあれが良いですね」
と日向も二人と違う所を見て言う。
「あんたらは勝手に遊んでて下さい!」
俺がそう言うと、3人は『えぇ~』と不貞腐れた顔をする。
「俺は秋哉と中村と遊びたいの!」
と佐倉先輩は駄々をこねる。
それに乗っかって宮藤先輩も日向先輩も『私も!』『俺もです!』と言う。
この人たちはどうしてこんな時だけ息が合ってるんだ!?
そう思うと俺は、ため息しか出なかった。
「緋桜はどれが気になる?」
俺は喚いてる先輩たちを放っておいて緋桜に聞く。
緋桜は少し見回して、『あれ』とクレーンゲームの方を指差した。
「じゃあ、まずはあれからやってみようか」
そう言うと、緋桜はコクンと頷いた。
「なぁ、何で『気になる?』って聞いたんだ?」
クレーンゲームの方に向かってると、佐倉先輩がそう聞いてくる。
「え?」
「普通は『どれがいい?』とか『どれがやりたい?』とか聞くだろ?でも秋哉は中村に『どれが気になる?』って聞いてただろ?」
そう言われて『あぁ』となる。
「緋桜は『どれがやりたい?』とか『どれがいい?』って聞くと、俺の好きなやつでいいって返してくるんですよ。
『どれが気になる?』って聞くと自分の意思を言うんです。まぁ、それも最近の事ですけどね」
少し前までは『何が気になる?』って聞いても、『何もない』って返ってきてたから、それも緋桜の大きな進歩だ。
「…なるほどね」
先輩はそう呟くと、何か納得したようにウンウンと頷いていた。
「でもちょっと中村の事甘やかしすぎじゃないか?」
先輩にそう言われて、確かにそうかもしれないと思う。
でも……
「緋桜は今まで何かを求めたりする事を諦めてきたんです。だから、俺が緋桜に望むものを与えてあげたいんですよ。俺の自己満足です」
俺がそう言うと、先輩はため息をつく。
「…まぁ、今の中村にはそれくらいが丁度いいのかもしれないな」
そう言って先輩はフッと笑った。
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