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第149話

(秋哉side) 「………中村、遅くないか?」 そう佐倉先輩が言って、俺は時計を見た。 緋桜がトイレに行くと言って離れてから随分たつ。 「……俺、ちょっと探してきます」 そう言って立つと先輩に止められた。 「待てって。中村だって子供じゃないんだ、そのうち戻ってくるだろ」 『少し迷ってるんじゃないか』と先輩は言う。 俺も最初はそう思った。でも、なんか胸がザワつく。 ザワザワとして落ち着かない。 「……なんか、嫌な予感がするんです」 俺がそう言うと、先輩たちの表情が変わる。 「お前がそう言うとシャレになんないな」 俺の勘はよく当たる。 先輩たちもそれを知っていた。 俺たちは皆で緋桜を探すことになった。 もしかしたら入れ違いで緋桜が戻ってくるかもしれないから宮藤先輩は残ると言った。 宮藤先輩を一人には出来ないってことで日向先輩も残ることになった。 俺と佐倉先輩は二手に別れた方が効率がいいってことで、手分けして探すことにした。 「何かあったらすぐに連絡しろよ」 「…分かりました」 不安だけがどんどん募っていく。 俺は無意識に拳を握りしめていた。 「大丈夫、ただ迷ってるだけだって」 そう言って先輩は俺の肩をポンと叩く。 俺はそれに頷いた。 大丈夫 ただ迷ってるだけ 何もない 大丈夫 俺はそう自分に言い聞かせた。

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