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第151話
(秋哉side)
………居ない。
トイレ、ゲームコーナー、カフェエリア。
思い当たる場所は一通り探した。
それでも緋桜の姿は見つけられなかった。
人が多いから見逃してたのか?
……いや、いくら人に紛れても緋桜を見つけられる自信はある。
俺はもう一度探そうと来た場所を戻った。
もう結構な時間探してると思って時計を見る。
でもまだ探し始めてから十分くらいしか経っていなかった。
携帯を確認しても、先輩からは何も連絡がない。
先輩もまだ見つけられてない、そう思うと気が焦ってくる。
嫌な予感は消えない。
むしろ強くなってる気がする。
緋桜がなんの連絡も無しにこんな長時間離れる訳がない。
やっぱり何かあったのか?
そう思ったけど、俺はそれを打ち消すように首を振った。
一度先輩たちの所に戻った方がいいか。
そう思って俺はバスケットコートがある場合に戻ろうとした。
その途中、ふと目に入った従業員以外立ち入り禁止の通用口。
まさかとは思った。
それでも何か気になって、俺はその通用口に向かった。
立ち入り禁止と書いてある進入禁止のチェーンを跨ぐ。
そこはすぐ階段になってて、俺は下を覗いてみた。
人は見当たらないけど、微かに話し声が聞こえてきた。
周りの音で何を話してるのかまでは分からない。
スタッフがいるのかと思ったけど、話し方でスタッフじゃないのが分かった。
俺はゆっくりと階段を降りた。
さっきより胸のザワつきが大きくなる。
こういう時の勘は嫌ってほど当たる。
俺の中では、ほぼ確信に変わっていた。
階段を降りていると、聞こえなかった会話が少しづつ聞き取れるようになってくる。
それでも一人の声しか聞こえなくて、一方的に喋ってるのか、相手の声が小さいのか分からない。
階段を降りていって、丁度一階と二階の間。
階段の途中にある踊場に2つの人影があった。
そこで見たのは、男に壁に押し付けられて泣いてる緋桜の姿だった。
後ろ姿でその男が誰なのかは分からない。
でもそんな事は今はどうでもよくて。
俺は、考えるより先に男を緋桜から引き剥がしていた。
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