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第152話
(秋哉side)
男の首根っこを掴んで思い切り後ろに引っ張る。
突然のことで受け身を取れなかった男は派手に転ぶ。
俺は、その男の顔を見て驚いた。
「……斎藤和樹?」
斎藤は打ち付けた体の痛みで顔を歪めている。
「…なんでお前が……?」
斎藤に気を取られていると、拘束が解けた緋桜がその場に座り込んだ。
俺はその瞬間、斎藤のことはどうでもよくなって緋桜の横に寄り添う。
「緋桜、大丈夫!?」
そう呼び掛けても、緋桜は涙を流してしゃくりを上げるだけだった。
「……緋桜に何をした?」
そう言って俺は斎藤を睨み付けた。
そうすると、痛がって顔を歪めていた斎藤がニィと笑う。
「本当に助けに来るとはな。そんなにその疫病神が大事か?」
その瞬間、緋桜の体がビクッと揺れる。
俺は緋桜を気にしつつも、斎藤を睨み付けることを止めなかった。
「お前も災難だな、そんなのに取り付かれて」
「俺は災難なんて思ってない。俺が好きで緋桜と一緒にいるんだ」
そう言った瞬間、斎藤が笑い出す。
「何?もしかしてお前らそういう関係?」
笑ってた斎藤の顔に嫌悪感が浮かぶ。
「気持ち悪」
こいつの言葉は耳障りで仕方ない。
早く黙らせて俺たちの前から消えてほしかったけど、今後緋桜に近付かないように釘を刺しておきたかった。
どうしようかと思ってると、横からヒューヒューと異様な音が聞こえた。
見ると、緋桜が胸を押さえて苦しそうにしている。
「緋桜!?」
呼び掛けても反応がなく、苦しそうな呼吸を繰り返していた。
過呼吸?
「緋桜落ち着いて、大丈夫だから」
そう言って俺は緋桜の背中を擦る。
ふと斎藤を見ると、斎藤が逃げようとしていた。
「っ!待て!」
逃げる斎藤を追おとすると、緋桜の体がグラッと揺れる。
俺は慌てて緋桜の体を支えた。
その隙に斎藤には逃げられてしまった。
斎藤に逃げられたのは悔しいけど、今は緋桜だ。
そう思って、俺は腕の中でいまだに苦しそうに呼吸をする緋桜を抱き締めた。
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