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第154話
(秋哉side)
「緋桜くん、今日はゆっくり休んで」
家について車を降りると、佐々木が緋桜にそう言う。
緋桜はそれに頷いて部屋に入っていった。
そこは俺が緋桜のために用意した部屋。
大抵は俺の部屋にいるけど、一人になりたい時もあるだろうと佐々木に言われて用意した。
今まであまり使われてはなかったけど、今回緋桜は迷わずその部屋に入っていった。
「緋桜くん、大丈夫でしょうか?」
部屋に入っていった緋桜を見送りながら佐々木が呟く。
「……分からない」
そう言って俺も緋桜の入っていった部屋の方を見た。
事が事だから仕方ないとは思う。
今の緋桜にいつも通りは難しい。
緋桜は普段でも、あまり人の目を見ない。
それでも、話をするときは必ずその人を見てた。
でも、あれから緋桜は一度も俺たちを見ない。
俺はその事が引っ掛かった。
……大丈夫だよな?
そう思って、俺は緋桜の部屋を眺めていた。
結局、緋桜は夕飯の時になっても部屋から出てこなかった。
佐々木が声を掛けても返事がなかったらしい。
もしかしたら寝てるのかもと佐々木は言った。
「…後で俺が様子を見がてら持ってくよ」
俺がそう言うと、佐々木はお願いしますと言ってきた。
「…緋桜、起きてる?」
そう呼び掛けながら、俺はドアをノックする。
でも緋桜からの返事はなかった。
開けて緋桜の様子を見ることも出来たけど、何故かそれは止めておいた方がいいような気がした。
「ご飯、ここ置いておくから食べれそうだったら食べて」
そう言って俺はお盆に乗せた食事を部屋の前に置いた。
俺は少しだけ部屋の様子を伺う。
中からは物音一つしない。
緋桜が居るはずなのに、それを感じない。
俺はそれに少し寂しさを感じつつ、『おやすみ』と声を掛けて自分の部屋に戻った。
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