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第155話

(秋哉side) 朝になっても緋桜は部屋から出てこなかった。 俺は学校に行く前に緋桜に声を掛けた。 それでもやっぱり返事はなかった。 俺は後ろ髪を引かれつつも、佐々木に緋桜の事を頼んで家を出た。 授業が終わって生徒会室に顔を出すと、既に待ち構えていた3人に捕まった。 「で?中村の様子はどうだ?」 と佐倉先輩が食い気味に聞いてくる。 「今日は中村くん休みみたいね」 と宮藤先輩が心配そうに言う。 「昨日の今日じゃ無理ないよ」 日向先輩が宮藤先輩に説明するように言う。 先輩たちが帰った後のことは一応連絡していた。 と言っても、『帰っていいと言われたから帰る』と伝えただけだった。 緋桜の様子とかはまだ判断が出来なかった。 「緋桜は昨日から部屋に籠ってます」 そう先輩たちに言う。 というか、それしか言えない。 佐々木の話では、昨日俺が持ってた食事にも手はつけられてなかったらしい。 朝食にも来なかったから、佐々木も心配していた。 昼は食べてくれてるといいんだけどな。 そう思って、俺は小さくため息をついた。 「でも、一回顔を見た方が良いかもな」 俺の様子を見てか、佐倉先輩がそう言う。 「…でも無理には」 「そんなんじゃ、中村はいつまで経っても出てこないかもしれないぞ?」 そう言われて考える。 無理にってのは気が引けるけど、確かに一度顔を見た方が良いかもしれない。 「帰ったら緋桜の様子見てみます」 そう言うと、佐倉先輩に『あまり嫌がるようなら止めとけよ』と言われた。 退きすぎも駄目、押しすぎも駄目。 結構難しいな。 なんか付き合う前みたいだと、ふと思った。

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