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第157話
ずっと斎藤の言葉が頭から離れなかった。
『疫病神のくせに』
『あいつもお前なんかに寄生されていい迷惑だよな』
秋哉は違う。
『そう思ってるのはお前だけだ』
『お前はその内あいつに捨てられる』
違う。
秋哉はそんなことしない。
『誰もお前なんかいらない』
秋哉は違う。
そう思いたいのに、秋哉を信じたいのに。
あいつの言葉にどんどん塗り潰されていく。
どんどん塗り潰されて、黒くなっていく。
「緋桜!!」
名前を呼ばれて肩を掴まれる。
「何を言ってるの?」
そう言う秋哉が怖くて、俺は秋哉の顔が見れなかった。
「……俺は……皆に迷惑掛けてばかりだ。だったら、側にいない方が……」
その方が皆幸せなんじゃないかと思う。
「……本当にそう思ってるの?」
そう低い声が聞こえて、自然と体が揺れる。
「……俺は……『疫病神』だから……」
俺が側にいたら皆を不幸にしてしまう。
「緋桜は『疫病神』なんかじゃない!」
『口ではなんとでも言える』
そう秋哉が言っても、後からあいつの声が聞こえてくる。
秋哉の声があいつの声で掻き消される。
俺はそれ以上、何も言えなかった。
黙っていると秋哉のため息が聞こえてくる。
「…分かった、もういいよ……今日はもう休んで」
そう言って秋哉は俺から離れると、部屋から出ていった。
「……秋哉…?」
秋哉が居なくなった空間に呼び掛けてみる。
でも、シンと静まりかえるだけで何も返ってこない。
ただ謝りたかっただけだった。
心配掛けたこと、迷惑を掛けたこと。
ただ謝りたかった。
…………秋哉に嫌われた。
そう思った瞬間、
俺の中で何かが音をたてて崩れた。
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