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第158話
(秋哉side)
『俺は疫病神だから』
緋桜はまた自分を『疫病神』と呼んだ。
多分、斎藤に言われたんだろうな。
緋桜は他の人に言われると、そう思い込んでしまう。
今までがそうだったから。
俺が『緋桜は疫病神なんかじゃない』っていくら言っても、今の緋桜には届かない。
今朝も部屋から出てこなかったし、声を掛けても返事がなかった。
どうしたらいいのか全く分からない。
そう思うとため息が出た。
「なーに辛気くさい顔でため息ついてんだ?」
そう言って佐倉先輩が覗き込んでくる。
「ぁ……いや、実は緋桜が……」
俺は昨日の緋桜とのやり取りを話した。
「バカッ!!」
俺の話を聞いた先輩がそう言っていきなり机をバンと叩く。
俺も突然のことでさすがに驚いて体が揺れた。
「なんで中村を突き放すような真似をした!?」
そう言って先輩は怒る。
「突き放してなんかいませんよ」
「でも『もういい』って言ったんだろ!?」
俺は先輩がなんで怒ってるのか分からなかった。
そんな俺の様子を見て先輩はため息をつく。
「よく考えてみろ、中村はお前に執着してる節がある。おまけに今の中村は斎藤に会ってかなり弱ってる。そんな時にお前から『もういい』なんて言われてみろ。中村がなんて思うか、お前なら分かるだろ?」
緋桜を突き放したつもりなんて、これっぽっちもない。
あの時は自分を卑下する緋桜が辛そうで、俺がそんな緋桜を見たくなくて、無理に話をしなくていいと思って『もういい』と言った。
それが間違いだった?
緋桜はあの時、なんて思った?
「……すいません、俺帰ります」
そう言って俺は急いで生徒会室を出た。
その帰り道だった。
佐々木から緋桜が居なくなったと連絡がきた。
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