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第159話

佐々木さんの目を盗んで、俺は家を出た。 秋哉に嫌われて、もうあの家には居られない。 でも家を出たはいいけど、行く宛なんてなかった。 俺はフラフラと歩いて、気付いたら学校の屋上に来ていた。 もう生徒もまばらで、ここまでは人に会わずにすんだ。 今は誰とも会いたくなかった。 辺りを見回して人が居ないことを確認する。 ここは俺がこの学校に入学した時、一人になりたくてたどり着いた場所。 本校舎とは離れてるから生徒は殆ど来ない。 一人になるには最適の場所だった。 どうしてここに来たんだろう。 ここは最近では秋哉と待ち合わせたり、お昼を食べたりして一緒に過ごすことが多かった。 所々に秋哉の気配を感じて、胸が苦しくなる。 俺はフェンスに凭れ掛かって遠くを眺めた。 ここは人が殆ど来ないせいか、フェンスの高さが俺の胸くらいしかない。 俺はフェンスに遮られることなく見えるこの景色が好きだった。 ここは静かなのに、下からは生徒たちの声が聞こえてくる。 その声を聞くのが好きだった。 でも、今はその景色が色褪せて見える。 生徒たちの声が煩わしく感じる。 もう何もかもがどうでもいい。 そう思ったら、 引き込まれるように、体が前に動いた。

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