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第160話
(秋哉side)
緋桜とちゃんと話をしよう。
そう思って、俺は急いで家に帰った。
その途中で佐々木からの電話が鳴った。
緋桜に何かあったとかと思って慌てて電話に出た。
そこで緋桜が居なくなったと聞かされた。
佐々木の話では、昼過ぎくらいまでは居たと思うと言っていた。
佐々木も緋桜の部屋に入るのは躊躇してたから、外から声を掛けるくらいだったけど、佐々木自身も何か感じたのか、ドアを開けてみたら居なかったらしい。
緋桜が居なくなったと聞いてから、嫌な予感がしてた。
俺は必死に緋桜が行きそうな場所を考える。
でも今回に限って緋桜の行きそうな場所が思いつかない。
緋桜が行きそうな場所……
思いつかない。
よくよく考えてみたら、俺は緋桜の事を何も知らない。
緋桜の体質を知って、緋桜の置かれてる状況を知って、緋桜の全てを知った気でいた。
緋桜の好きなものは?
緋桜は何をしたら喜ぶ?
分からない。
緋桜はいつも俺に合わせてくれてたから。
でも今はそんな事はどうでもいい。
緋桜は何処に行った?
緋桜はこんな時何処に行く?
俺は必死に考えた。
ふと、緋桜が前に言ってた事を思い出した。
『ここは人が居なくて落ち着く』
そこは緋桜が唯一『好き』だと言った場所。
まさかとは思った。
でも気付いたら俺は、来た道を引き返していた。
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