163 / 452

第160話

(秋哉side) 緋桜とちゃんと話をしよう。 そう思って、俺は急いで家に帰った。 その途中で佐々木からの電話が鳴った。 緋桜に何かあったとかと思って慌てて電話に出た。 そこで緋桜が居なくなったと聞かされた。 佐々木の話では、昼過ぎくらいまでは居たと思うと言っていた。 佐々木も緋桜の部屋に入るのは躊躇してたから、外から声を掛けるくらいだったけど、佐々木自身も何か感じたのか、ドアを開けてみたら居なかったらしい。 緋桜が居なくなったと聞いてから、嫌な予感がしてた。 俺は必死に緋桜が行きそうな場所を考える。 でも今回に限って緋桜の行きそうな場所が思いつかない。 緋桜が行きそうな場所…… 思いつかない。 よくよく考えてみたら、俺は緋桜の事を何も知らない。 緋桜の体質を知って、緋桜の置かれてる状況を知って、緋桜の全てを知った気でいた。 緋桜の好きなものは? 緋桜は何をしたら喜ぶ? 分からない。 緋桜はいつも俺に合わせてくれてたから。 でも今はそんな事はどうでもいい。 緋桜は何処に行った? 緋桜はこんな時何処に行く? 俺は必死に考えた。 ふと、緋桜が前に言ってた事を思い出した。 『ここは人が居なくて落ち着く』 そこは緋桜が唯一『好き』だと言った場所。 まさかとは思った。 でも気付いたら俺は、来た道を引き返していた。

ともだちにシェアしよう!