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第162話
フェンスを越えようとすると、急に後ろに引かれた。
俺自身も、何が起きたのか分からなかった。
「……今、何しようと…してた?」
耳元で荒い息遣いと一緒にそう声が聞こえてくる。
その声を聞いたとき、瞬間的に『駄目だ』と思った。
「嫌だっ!」
そう言って俺は逃げようとする。
でも、ガッチリと抱えられててそれが出来ない。
「緋桜」
名前を呼ばれた瞬間、冷めきっていた心にまた熱が灯るのが分かった。
なんで、なんで来るの?
「緋桜」
嫌だ、名前なんて呼ばないで。
胸が苦しい。
嫌だ。
お願いだから、
俺の事なんかもう構わないで。
もう放っておいて。
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