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第165話
これ以上秋哉の声を聞いたら、離れたくなくなる。
もう秋哉の近くに居られないのに。
秋哉はもうそれを望んでないのに。
俺がそれを望んじゃいけない。
そう思って耳を塞いだ。
その後また名前を呼ばれたような気がしたけど、俺は反応しなかった。
しばらくすると、俺を掴んでいた秋哉の腕の力が緩んだ。
そのまま力無く地面に落ちる。
俺は思わず秋哉を見た。
秋哉はそのままの体勢で身動きせずに俯いている。
俺はそっと秋哉から距離をとった。
秋哉はその体勢から動く気配がない。
今だったら逃げられる。
そう思ったけど、秋哉をこのままにしておくのも気が引けた。
「……秋哉?」
名前を呼んでみても反応がない。
ここまで動かないとさすがに心配になってくる。
「……しゅ……」
もう一度名前呼ぼうとすると、秋哉が急に俺の手に触れる。
俺は驚いて秋哉の手を振り払った。
また少し距離をとって様子を伺う。
「…………や?」
様子を伺っていると秋哉が何かボソッと呟く。
「…え?」
俺は全く聞き取れなくて思わず聞き返してしまった。
「……もう…俺に触られるのも…いや?」
俺を見た秋哉と目が合う。
「俺のこと……嫌いになった?」
そう言って秋哉は今にも泣きそうな顔で、
すごく悲しそうな顔で、笑った。
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