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第166話
『俺のこと、嫌いになった?』
そう言われて驚いた。
「……なに、言ってるの…?嫌いになったのは秋哉の方でしょ?」
俺がそう言うと、秋哉は目を伏せる。
「……俺、緋桜が嫌いなんて一言も言ってないよ」
「でも、秋哉は『もういい』って………」
『もういい』って言葉は人が俺から離れてくときによく言われた言葉。
『もうお前なんか必要ない』って意味だ。
「確かに言ったよ。でもそれは緋桜を嫌いになったからじゃない」
どういう意味?
「……訳が分からない。じゃあ何で『もういい』なんて言ったの?
俺の事を嫌いになったから、もう要らないから『もういい』って言ったんじゃないの?
秋哉も俺が要らなくなったんでしょ?」
「違う!そんなつもりで言ったんじゃない!」
そう言って秋哉は俺の腕を掴む。
俺はその手を振り払った。
「嫌だ!」
そう言った瞬間、秋哉が傷付いた顔をする。
その顔を見て、自分の行動に少しだけ後悔した。
俺は秋哉から目を逸らす。
「……俺は秋哉の言ってる意味が分からない。何が違うのか分からない。
……皆そうだったんだ。最初は皆、俺の体質なんて関係ないって、気にすることないって。
でもトラブルとか事故とかが続くと、次第に皆の態度が変わっていく。最後にはもういいとか、お前なんか居ない方がいいって言って俺から離れてく。
……秋哉も、そうなんだろ?もう俺のこと要らないって、だから『もういい』って言ったんだろ?」
俺がそう言うと、秋哉が何か言おうとスッと口を開く。
俺はその瞬間、キュッと目を閉じた。
自分から聞いといて、秋哉の言葉を恐いと思ってる。
秋哉に面と向かって『嫌い』と言われるのを恐れてる。
「………緋桜は俺のこと、そいつらと同じだと思ってるのか?」
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