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第170話

秋哉からの連絡を受けて迎えにきた佐々木さんが車から降りるなり、いきなり俺を抱き締めてきた。 俺はどうしたらいいのか分からなくてパニクって秋哉を見ると、秋哉はただ微笑んでるだけだった。 「……佐々木、さん?」 「………良かった、無事で」 そう言って佐々木さんは苦しいくらいに抱き締めてくる。 ……あ 「……すいません、心配掛けてしまって」 そう言って俺は佐々木さんの服を軽く掴んだ。 こんなに気に掛けてもらえてたんだ。 そんなことにも気付かなかったなんて。 その後、我に返った佐々木さんが慌てて俺を引き剥がす。 「すまないっ!急にこんな」 慌てた佐々木がものすごい勢いで謝ってきた。 それに俺は少し驚いた。 「…いえ、大丈夫です」 俺がそう言うと、まだ俺の腕を掴んでいたことに気付いた佐々木さんはパッと手を離してまた謝ってきた。 「すまない」 ……これは俺に触れたことに謝ってきてるのかな? 「大丈夫ですよ」 「でも、いきなり触られるのは嫌だろう?」 そう言われて考えてみる。 ちょっと前までは我慢出来るくらいになったけど、触られることに嫌悪感があった。 でも今はそれが殆どない。 「大丈夫です」 そう言って俺が佐々木さんの手を握ると、佐々木さんは一瞬驚いたような顔をして、その後嬉しそうに笑った。 佐々木さんが帰ろうと言って車のドアを開ける。 あの家を出た俺が戻っても良いんだろうか。 そう思って、俺は車に乗るのを少しだけ躊躇した。 ドアの前で立ち止まっていると、秋哉にポンと背中を押される。 「大丈夫」 そう言って秋哉は笑う。 俺は頷くと、車に乗り込んだ。 秋哉も隣に乗ってきて俺の手を握る。 握られた手から伝わる秋哉の体温が心地いい。 車に揺られていると、何だかフワフワとしてくる。 俺の意識は段々と沈んでいった。 ふと目を開けると、俺はベッドに寝かされていた。 一瞬ここは何処だろうと思う。 起き上がろうとすると、なんか体が動かしにくい。 何とか起き上がって伸びをすると、全身の骨がポキポキと鳴った。 部屋を見回すと、そこが秋哉の部屋だと分かる。 ただなんで俺はここに寝かされてたのか分からない。 色々と考えているとカチャと音がしてドアが開いた。 「あ、緋桜起きてた?」 そう言って秋哉が顔を出す。 「調子はどう?」 そう言いながら秋哉はベッドの縁に座る。 「……大丈夫」 そう答えるも、俺は状況が全く把握出来ていなかった。

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