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第173話

「いやー、びっくりしたよ」 そう言って佐々木さんは笑う。 「……すいません」 上手く動けなかった俺は、秋哉に抱えられてキッチンに来た。 その姿を見た佐々木さんがどうかしたのかと慌てて駆け寄ってきた。 俺も慌てて事情を説明すると、佐々木さんはホッとしたように項垂れた。 申し訳ないのと、恥ずかしいのとで複雑だ。 秋哉は秋哉で『何かあったら直ぐに言うから、そんなに慌てなくてもいいじゃん』としれっと言うから佐々木さんが怒ってた。 俺はダイニングの椅子に座って、食事を作る佐々木さんを眺めていた。 「……なんで佐々木ばっか見てんの?」 テーブルを挟んで向かいに座っている秋哉が少し不貞腐れた感じで聞いてくる。 「…うん、今回のこともだけど……佐々木さんには迷惑ばかり掛けてるなって思って……」 佐々木さんは、なんでこんなにも俺の事を気にしてくれるんだろう。 秋哉のことだったら分かるけど、俺なんてなにも関係ないのに。 「そんなに気にすることないと思うよ。佐々木は緋桜のこと気に入ってるからね。逆に嬉しいんじゃないかな?」 そう言って秋哉はクスッと笑う。 ……俺、気に入られるようなことした覚え無いんだけど。 どちらかと言えば、寧ろ…… そう思って、俺はもう一度佐々木さんの見る。 「最初は放って置けないって感じだと思う。俺たちの関係もあるしね。 でも今は家族みたいに思ってるみたいだよ」 『前にそんなこと話してたよ』と秋哉は言う。 それを聞いて少しくすぐったい感じがした。 この感じって何なのかな? 「何の話をしてるんですか?」 秋哉と話をしてると、佐々木さんが料理を持ってくる。 『どうぞ』と言って俺の前にお皿を置いた。 お皿にはトマトのリゾットが盛られていて、トマトとチーズの良い香りがした。 「で?何の話をしてたんですか?」 そう言いながら佐々木さんは俺たちの斜め横に座る。 「佐々木が緋桜を好きだって話」 そう言って秋哉はイタズラっぽく笑った。 これはからかう気満々だなと思う。 「好きですよ」 佐々木さんはサラッと返す。 「えっ!?」 それに反応してしまったのは俺の方で、期待してた反応とは全く違う佐々木さんの反応に秋哉は不満そうな顔をした。 その後は何故か俺の話になって、俺は居たたまれなくなった。

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