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第174話
作ってもらったトマトのリゾットは美味しかった。
俺がこの数日まともに食べてなかったから、胃に優しいものってことで作ってくれてらしい。
それにも申し訳ないと思う。
俺が『すいません』と謝ると、謝る必要はないと言われた。
こういう時、他に何て言っていいのか分からない。
秋哉に『こういう時は"ありがとう"だよ』って言われたけど、迷惑掛けてるのになんで『ありがとう』なのかと思う。
そう言うと二人に笑われた。
食べ終わる頃には俺の体も普通に動くようになっていた。
俺と秋哉は部屋に戻る。
時間を見ると深夜2時、本当に1日寝てたんだなと思う。
ずっと寝てたから、当然寝るなんて出来ない。
でも秋哉はこれからは寝るだろうから、俺が一緒だと邪魔になるよな。
そう思って俺は、秋哉が俺の為に用意してくれた部屋に行こうとした。
そうすると急に手を掴まれる。
「どこ行くの?」
「え、部屋に戻ろうと……」
そう言うと『そっちじゃない』と言われて手を引かれた。
結局秋哉の部屋に戻ってきてしまった。
『緋桜が起きてるなら俺も起きてる』って秋哉は言ってたけど……
秋哉は俺の横でスヤスヤと寝息をたてていた。
部屋に戻った後、しばらくは話をしてたけど、秋哉が次第にうとうとし始めた。
寝ないように結構頑張ってたけど、結局睡魔には勝てなかったみたいだ。
頑張って起きてようとする秋哉はちょっと可愛かった。
そう思って俺は秋哉の寝顔を眺める。
俺はこの数日の事を思い返していた。
でも思い出すのは秋哉とのやり取りだけで、恥ずかしくなる。
そう思って俺は、枕に顔を埋めた。
でも恥ずかしいけど、愛しさもあった。
この気持ちが『愛しい』って知ったのは最近だ。
あの時秋哉に『好きだ』って言われたときに、この気持ちが溢れてきた。
その時は分からなかったけど、今なら分かる。
俺はもう一度秋哉の寝顔を見る。
スヤスヤと眠る秋哉を見て、また愛しさが溢れてきた。
俺は秋哉に少しだけ触れてみる。
頬をツンツンと突っついてみたり、撫でてみたり。
髪の毛にも触ってみた。
秋哉の髪の毛は少し癖がある。
でも柔らかくてサラサラで触り心地がいい。
しばらく秋哉の髪の毛で遊んでいると、急に手を掴まれた。
「あんま可愛いことしないでくれる?」
そう声がして驚いた。
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