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第176話
(秋哉side)
まさか緋桜が素直に『寂しい』と返してくれるとは思わなかった。
「…どうしたの?いやに素直だね」
そう聞くと、緋桜はチラッと俺を見てまた目を逸らす。
「……頑張るって、言ったから」
「え?」
「………あの時、秋哉がいろんな話しようって言ったから。俺も『頑張る』って返したから……」
緋桜は自分の気持ちを押し込めてしまうし、気持ちを人に伝えるのはかなり苦手だと思う。
そんな緋桜が一生懸命気持ちを伝えようとしてくれてる。
俺に応えようとしてくれてる。
俺はそれが嬉しかった。
でも、今まで無意識に爆弾を落としてきた緋桜が、これからは意図的にも落としてくるのか……
緋桜の事だからどっちにしてもそういう意味じゃないとは思うけど、俺、大丈夫かな?
そんな事を考えてると、緋桜が見つめてきてることに気付く。
まぁ、そういう意味じゃないとは思うけど………
今は
「緋桜に触りたい」
緋桜の言動がさっきから可愛いくて仕方ない。
緋桜の事だからただ単に恥ずかしがってるだけなんだけど、この数日緋桜に避けられてた反動かな。
緋桜に触りたい、そう思った。
そう思って緋桜を見ると、緋桜の顔がみるみる赤くなる。
「…秋哉……今のって……」
そう言って緋桜は何かモジモジとし始める。
「今の?何の事?」
俺は緋桜の言ってる意味が分からなくて聞き返してしまう。
緋桜は目を逸らした後、チラッと俺を見る。
「……俺に、触りたい……って…」
………ん?あれ?
「…もしかして俺、声に出してた?」
そう聞くと、緋桜は小さく頷く。
俺は『まじか!』と思って顔を押さえる。
完全に無意識だった。
どうしようかと思ってると、服が引っ張られる。
「………触りたいなら………触って、いい…」
緋桜はそう言って目を伏せる。
それは俺にとって、最大の爆弾だった。
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