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第178話
ふと目を開けるとベッドに寝かされてて、自分が寝ちゃったことに気付く。
丸1日寝てて、また寝るって……
俺はそう思って、顔を押さえて項垂れる。
そういえば秋哉は?
そう思って部屋を見渡すけど、秋哉の姿が見えなくて少し寂しい気持ちになる。
秋哉を探そうと部屋を出るときに、置いてある鏡に自分の姿が映る。
首筋には秋哉が付けたキスマークがくっきりとついている。
『これは、俺がずっと側に居るって証』
『これが消えない限り、俺が離れることはないから』
秋哉の言葉を思い出す。
言葉だけでも良かった。
秋哉が俺を好きって言ってくれて、すごく嬉しかった。
でもやっぱり言葉だけじゃ不安だったのかもしれない。
秋哉はそんな事はしないって分かってるけど、言葉は裏切るから……
俺はその印にそっと触れる。
だから、これが消えない限り秋哉は離れていかない、そう思えるだけですごく嬉しかった。
そう思うと胸が温かくなった。
無性に秋哉の顔が見たくなった。
俺は少し急ぎ気味に部屋を出た。
俺は秋哉を探してキッチンに向かった。
秋哉は何かあると佐々木さんの所に行くから、多分キッチンだろうと思った。
そっと覗いてみると、奥では佐々木さんが何か作業していて、手前のテーブルに秋哉がうつ伏してた。
毛布が掛けられてるから、もしかしてここで寝たのかな。
そんな事を考えてると、佐々木さんが俺に気付いてチョイチョイと手招きをする。
俺は秋哉を気にしつつ、佐々木さんの所にいった。
「おはよう」
そう言って佐々木さんはニコッと笑う。
「…おはようございます」
佐々木さんに挨拶を返すけど、秋哉が気になってついつい見てしまう。
そんな俺を見て、佐々木さんはクスッと笑った。
「あの後、寝れないってここに来たんだよ」
『もう少し寝かせてあげて』と佐々木さんは言う。
朝食の準備をすると言って佐々木さんはまた奥に入っていった。
俺は秋哉の顔が見えるように斜め横に座った。
こてんと頭をテーブルに預けて秋哉の顔を見る。
………あれって、絶対ヤる流れだった…よね。
俺は夜の事を思い出して、途端に顔が熱くなって顔を逸らす。
でも秋哉に触りたいって言われて、俺も触っていいって応えた。
なのに俺が寝ちゃったから、秋哉はここで寝る羽目になってる。
俺はもう一度秋哉の顔を見る。
……我慢、させてるのかな。
しばらく秋哉の寝顔を見てると、秋哉の顔の位置が変わって見えなくなる。
ちょっと残念。
それでも眺めていると、秋哉がモゾッと動く。
「…………あまり見ないでくれる?」
そう声がして驚いた。
秋哉がチラッと俺を見る。
その顔は少し赤い。
「起きて、たの?」
「……さっき起きた」
秋哉は『うっすら目を開けたら緋桜が見てるから起きれなかった』と言いながら体を起こす。
俺は秋哉をガン見してたことに今さらながらに気付いて恥ずかしくなる。
「…えと、なんでここで寝てたんだ?」
そう聞くと、秋哉はまたチラッと俺を見る。
「…佐々木と話してたら、いつの間にか寝てた」
秋哉は少しぶっきらぼうに言う。
……やっぱり怒ってるのかな。
そう思ってると、佐々木さんがクスクス笑う。
「……何笑ってるんだよ」
秋哉がムスッとした顔で、そう言いながら佐々木さんを少し睨む。
「緋桜くんは気にしなくていいよ。秋哉さんは拗ねてるだけだから」
そう言いながら俺の前に朝食を並べていく。
チラッと秋哉を見ると、ふいっと目を逸らされた。
……やっぱり我慢させてる。
俺はどうすればいいんだろう。
どうすれば秋哉は喜んでくれるんだろう。
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