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第185話

俺は久しぶりに学校に来た。 1週間ぶりくらいか? 昨日の夜に秋哉に携帯を見せられた。 そこには先輩達からのメールや電話が沢山来てた。 先輩たちには相当心配を掛けちゃったみたいだ。 授業が終わって、俺と秋哉は生徒会室で待機していた。 クラスでも、どうしたのかと何人からか聞かれた。 もし何か聞かれたら『風邪』って言えと秋哉に言われた。 後から聞いたけど、佐々木さんが学校にそう言って届け出を出していてくれてたらしい。 だから俺もクラスでは風邪で休んでた事になってる。 先輩たちが来るのを待ってると、秋哉がコーヒーを入れてくれた。 秋哉と一緒にそれを飲んでると、部屋の外からバタバタと足音が聞こえてきた。 バタンとドアが勢いよく開けられる。 それには俺も一瞬驚いた。 勢いよく開けられたドアのところには佐倉先輩が息を切らせて立っている。 その後から宮藤先輩と日向先輩も来た。 佐倉先輩は俺を見るなりツカツカと依ってきた。 「…あ……あの…」 少し怖い顔で依ってこられて、俺も思わず引いてしまう。 どうしたらと思ってると、佐倉先輩に抱き締められた。 突然の事で、俺も固まってしまった。 「……良かった」 そう耳元で声がする。 「良かった」 また声がする。 そう言って先輩は俺を抱き締める腕に力を入れた。 俺は、思ってたよりも先輩に心配を掛けてたんだ。 「……すいません、でした」 そう言って先輩の服を軽く掴んだ。 しばらく先輩に抱き締められてたけど、我に返った先輩が『悪い』と言いながら俺から離れる。 そこから先輩は俺に触れないようにしてるから、俺の事を気遣ってくれてるんだろう。 「大丈夫です」 そう言って俺は佐倉先輩の手を握った。 その行動に先輩たちは驚いていた。 「え!?どういう事!?」 そう言って佐倉先輩は俺と秋哉を見る。 秋哉もその様子を見てフッと笑う。 「あの俺、もう触られても平気、ですから」 そう言って俺は先輩の手を握る手に力を入れた。 その様子を見てた宮藤先輩と日向先輩も近寄ってくる。 「…本当に?本当に触られても大丈夫なの?」 宮藤先輩はそう言って俺に触れようとするけど、半信半疑みたいで手だけが泳いでいる。 俺はそんな先輩を見て、佐倉先輩の手を握る手を片方だけ離して宮藤先輩に差し伸べた。 「はい」 宮藤先輩はその手に恐る恐る触れる。 チョンと触れると俺の様子を見る。 俺が平気なのを確認してまた恐る恐る、今度はキュッと握ってきた。 それでも平気そうにしてる俺に、宮藤先輩は抱き付いてきた。 その拍子に側に居た佐倉先輩が宮藤先輩に突き飛ばされる。 完全に不意討ちだったみたいで、佐倉先輩は派手に転んだ。 そんな佐倉先輩に、日向先輩と秋哉が駆け寄る。 先輩の近くにいた俺は、宮藤先輩に抱き付かれて動く事が出来なかった。

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