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第186話

(秋哉side) 緋桜の接触恐怖症が治った。 それに気付いたのは佐々木だった。 佐々木が緋桜に思わず抱き付いてしまった時、緋桜は佐々木を拒絶することなく受け入れた。 その後、家に来るお手伝いとかにも協力してもらって、何人かと試してみた。 緋桜は元々触られるのが苦手だから、触れる程度だけど、自分から皆に触る事が出来た。 先輩たちも大丈夫だったみたいだ。 先輩たちは余程嬉しかったみたいで、宮藤先輩なんて緋桜にくっついて離れない。 日向先輩も宮藤先輩とは反対側の緋桜の手をずっと握っていた。 緋桜はそういうのには慣れてないから戸惑っていた。 「良かったな」 俺が緋桜たちを眺めていると、佐倉先輩がそう声を掛けてくる。 「はい」 「でも、やっぱあれはどうかと思うぞ?」 そう言って先輩は自分の首筋をトントンと指で叩く。 その行動が何を意味してるのかはすぐに分かった。 緋桜の首筋には俺が一昨日付けたキスマークがある。 あれは俺がずっと緋桜の側にいるって証。 緋桜はそれを隠そうとはしない。 っていうよりはそこまで意識してない。 そこらへんは無頓着だから、隠そうって考えにはいかないみたいだ。 指摘されて恥ずかしい思いをするのは緋桜なんだけど…… そう思って、俺は考えた。 キスマークは時間が経てば消えてしまう。 それを上書きするのは俺としては良いんだけど…… 消えることのない、目に見える何か………か。 久しぶりの学校から帰った緋桜は早々にソファに倒れ込んだ。 結局、最後まで先輩たちが離れなかったから、完全に気疲れだなと思う。 「緋桜、大丈夫?」 そう聞くと、緋桜はチラッと俺を見る。 「……疲れた」 「だよね」 俺は笑うしか出来なかった。 「……ねぇ緋桜、今度付き合ってほしい場所があるんだけど」 そう言ってソファに寝転がってる緋桜の頭に手を置く。 「……付き合ってほしい場所?」 「うん、隣街なんだけど」 俺がそう言うと、緋桜の顔が一気に曇る。 「…ぁ…俺は…」 「緋桜が嫌なのは分かってる。でも今回は緋桜に一緒に来てほしい。緋桜が一緒じゃないと意味がないんだ」 そう言うと、緋桜は考え込んでしまった。 「……分かった、行く」 しばらく考え込んでた緋桜がそう言う。 行くとは言ってくれたものの、緋桜の顔は曇ったままだった。

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