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第187話

(秋哉side) 緋桜と出掛ける約束をしてから二週間、頼んでた物が仕上がったと連絡がきた。 丁度明日は休みだ。 「緋桜、明日大丈夫?」 俺がそう言うと、緋桜は頷く。 でもその顔はやっぱり曇る。 今回はどうしても緋桜と行きたいと思った。 でもそれは俺の我が儘だ。 「ねぇ緋桜、緋桜が嫌だったら止めてもいいよ?」 そう言うと、緋桜は小さく首を振った。 「…行きたくない訳じゃない。秋哉と出掛けられるのは嬉しい。俺だって、秋哉と出掛けたい。でもやっぱり……怖い」 そう言って緋桜は俯いてしまう。 緋桜は事故で友人を亡くしてる。 その事からまだ解放されていない。 「ねぇ緋桜、最悪のことを考えるんじゃなくて、楽しい事を考えよ?」 「……楽しい事?」 緋桜は意味が分からないと言うみたいに首を傾げる。 「何かあったらなんて考えてたら、身動き取れなくなるよ。そんな事よりは、何をしたいか考えようよ」 「……でもそれを俺が考えたら、絶対にうまくいかない」 緋桜は今までそうやって色々なものを諦めてきた。 「そうなったら、それを楽しめば良いんだよ」 「……楽しむ?」 「そう、別にうまくいかなくても、またやり直せばいい。それぐらい、俺がいくらでも付き合ってあげるから」 そう言って俺は、緋桜の手を握った。

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