201 / 452
第198話
秋哉と少しでも離れる事がすごく寂しいと思った。
それは多分、普段と違う一面を見たから。
秋哉が金持ちだってのは分かってる。
家もでかいし、佐々木さんみたいなお付き?の人も居るし。
それでも普段の秋哉を見てると、俺たちと一緒で同じ高校生なんだと思う。
でも今日みたいにちょっと高級な店で平然としてる秋哉を見ると、格好いいと思った反面、やっぱり俺とは違うんだと秋哉を遠くに感じた。
そのせいか、今この手を離すと秋哉がどっかに行っちゃうんじゃないかと思って俺は秋哉の服の裾を離す事が出来なかった。
それを読み取ったのか、急に秋哉が手を握ってきた。
それには驚いたけど、俺もその手を握り返した。
しばらくすると、連絡を受けた佐々木さんが迎えに来る。
「お待たせしました」
そう言って佐々木さんはわざわざ車から降りると後部座席のドアを開けた。
秋哉に『電車に乗れる?』って聞かれたとき、一瞬嫌だと思った。
それでも『乗れる』と答えた筈なのに、秋哉は佐々木さんを呼ぶと言った。
やっぱり俺は秋哉の言った通り、思ったことが顔に出るのかな。
「…わざわざすいません」
車に乗り込む時に佐々木さんにそう言うと、佐々木さんにニコッと笑った。
「気にしなくていいよ」
そう言って笑ってくれるけど、やっぱり申し訳ないと思う。
「で、楽しかった?」
そんな事を考えていると、佐々木さんがそう聞いてくる。
俺は質問の意味が理解出来なかった。
そんな俺を見て、佐々木さんはクスッと笑う。
「秋哉さんと出掛けて、緋桜くんは楽しかった?」
佐々木さんは俺に分かるように言い直してくれる。
俺はようやく質問の意味を理解した。
俺は秋哉の顔をチラッと見る。
今日は人が多くて疲れたし、見たかった物は殆ど見れなかった。
でも……
「…はい、楽しかったです」
「そう、良かった」
そう言って佐々木さんは笑った。
ともだちにシェアしよう!