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第206話
秋哉は俺にもっと幸せになってほしいと言う。
今でも十分過ぎるほど幸せなのに、これ以上なんて。
俺は今までたくさんの人を不幸にしてきたのに、その俺が幸せになっていいんだろうか。
『幸せになったら駄目なんて人、どこにも居ないよ』
……誰?
『緋桜は幸せになっていいよ』
誰なんだろう。
シルエットだけで、顔が見えない。
でも………なんだろう、すごく懐かしい感じがする。
『もうそろそろ自分を許してあげてもいいんじゃない』
でも俺は、許されないことをたくさんした。
『それは緋桜がしたことじゃないでしょ』
だとしても、俺のせいには代わりない。
だって、俺は"疫病神"だから。
『緋桜はもう疫病神じゃない。周りに笑顔が溢れてる疫病神なんていないよ』
その人がそう言うと、その人の顔が一瞬だけ見えて、笑ってるような気がした。
目を開けると部屋の中には朝日が射し込んでいる。
あれは…………
「緋桜、おはよう………ってどうしたの!?」
起きた秋哉が俺の顔を見た瞬間慌て出す。
「…え?」
何がだろうと思ってると、秋哉が俺の目の下をスッと指で撫でた。
「泣いてる」
そう言われて秋哉の指を見ると濡れてて、自分でも頬に触れてみた。
そこで自分が泣いてることに気付いた。
「どうかした?」
「……夢、見てた気がする」
「怖い夢だったの?」
秋哉にそう聞かれて考えてみる。
内容はあまり覚えてないけど、すごく懐かしくて、優しい夢。
「……すごく、いい夢だった気がする」
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