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第207話

(秋哉side) 最近、緋桜が変わったような気がする。 どこがって言われると返答に困るけど…… 「中村、最近他の奴ともよく話してるな」 そう佐倉先輩が言う。 「…そうですね」 緋桜は前までは話し掛けられれば対応する程度だった。 でも今は、自分から話し掛けてるみたいだ。 まだそれはぎこちなくて、話し掛けられた方も驚いている。 「腑に落ちなさそうだな」 そう言って先輩はクスッと笑う。 「無理してるんじゃないかと思って」 俺がそう言うと、先輩はもう一度緋桜を見る。 「確かに無理はしてるだろうな。今まで人と殆ど話して来なかった奴がいきなり話せるようにはならない。でも、中村なりに努力してるんじゃないか」 何が緋桜を変えたのかは分からないけど、緋桜の行動は何かを確かめてるようにも見えた。 「まぁ悪いことではないし、もう少し様子を見たらどうだ?」 そう先輩は言う。 確かに悪いことではないし、緋桜が変わろうとしてるのを俺が自分勝手に止める訳にはいかない。 俺は先輩の言う通り、様子を見ることにした。 今日は佐々木が用事で迎えに来れないから、久々に徒歩で帰る。 当然緋桜も一緒だ。 いつもは会話をするけど、今日は無言で歩く。 まぁ、会話って言っても俺が一方的に話し掛けて、緋桜がそれに答えるって感じだけど。 でも今日の緋桜は、何か考えてるみたいで話し掛けずらかった。 「…ねぇ秋哉、俺は変われてるかな?」 黙っていた緋桜が唐突そう聞いてくる。 それには俺も一瞬驚いた。 「え?」 「……変わりたいって思って、色々してみたけど、自分では変わってるのかどうか分からない」 そう言って緋桜は俯いてしまう。 やっぱり緋桜は変わりたいと願ってる。 多分今までの行動は緋桜なりに考えて、緋桜なりに頑張ってる結果。 「変わってるよ」 俺がそう言うと、俯いていた緋桜が俺を見る。 「緋桜はちゃんと変われてるよ」 「……本当に?」 緋桜はまだ半信半疑みたいで、何度も確認してくる。 「変わろうと頑張ってるのに、変わらない訳がないよ。緋桜はちゃんと変わってる、俺が保証するよ」 俺がそう言うと、緋桜はスッと目を伏せた。 「……そうか…変われてるんだ」 そう言う緋桜が、微かに笑った気がした。 その後、緋桜はまた黙ってしまって、何か考えてるみたいだった。 しばらく様子を見てると、目を伏せていた緋桜がスッと前を向く。 その後、俺を見た。 「秋哉、お願いがあるんだ」 緋桜は真っ直ぐ俺を見て、そう言った。

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