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第208話
「緋桜、緊張してる?」
車に乗り込んだ俺を秋哉がそう言って覗き込む。
「……大丈夫」
「本当に?」
そう聞かれて、俺は一瞬言葉に詰まる。
「……でも、決めたから」
そう言う俺に、秋哉は苦笑に近い笑顔を見せた。
「分かった、でも無理はしないでね」
そう言って秋哉は俺の頭に手を置いた。
秋哉の指示で車が動き出す。
そんな些細な事でさえ、俺の心臓はいつもより激しく脈打つ。
目的地に近付くにつれて窓の外が見覚えのある風景に変わる。
心臓がうるさい、呼吸が苦しい。
それでも、俺は自分に『大丈夫』と言い聞かせて拳を握った。
ギュッと拳を握っていると、その拳に秋哉が手を置いた。
俺は驚いて、体が揺れる。
秋哉を見ると、秋哉は困ったように笑った。
その後秋哉は何か言うわけでもなく、ただずっと俺の手を握っててくれた。
俺にはそれが秋哉にも『大丈夫』と言われてるみたいで、少し気持ちが軽くなった。
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