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第211話
前に秋哉にここに連れてこられた時、罪悪感で押し潰されそうだった。
俺が拓真を死なせたのに、どんな顔して拓真の墓標の前に立てばいいのか分からなかった。
拓真のお墓参りなんて、俺にその資格は無いと思ってた。
俺が行っても拓真は喜ばないし、拓真の両親だって絶対に喜ばない。
むしろ嫌な思いしかさせない。
そう思ってた。
ある日、拓真のお母さんから手紙が来た。
そこには俺への謝罪と拓真のお墓の場所が書かれていた。
でも俺がその手紙に答えることは無かった。
秋哉に連れてこられた時、偶然拓真のお母さんと会って、謝罪された。
それが心から言ってる言葉だって分かった。
でもいくら拓真のお母さんが許してくれても、俺自身が自分を許せなかった。
この時は拓真のお母さんにも秋哉にも、『気持ちの整理が出来たら、今度は自分で来る』と言った。
でもこの時は俺自身、多分それは来ないと思っていた。
気持ちの整理なんて出来ない、出来るわけがないと思ってた。
でもあの日、あの夢を見た日。
どんな夢だったのか忘れてしまったけど、何故か許されたような気がした。
そんな訳ないのに、どうしてそう思ったのか自分でも分からない。
拓真のお墓に行ったら、何か分かるんじゃないかと思った。
何でそう思ったのか自分でも不思議だった。
拓真のお墓に行くなんて、今まで考えたことも無かったから。
でも『行きたい』と思う気持ちが確かに自分の中にあった。
だから秋哉にお願いした。
でもいざ行くとなると、やっぱり怖くて、不安で押し潰されそうだった。
だからあの門を目の前にすると足がすくんだ。
あの門は俺にとって、大きな壁。
越えられないものだと思ってた。
でも秋哉に背中を押されたとき、目の前が開けたような気がした。
門をくぐった時、絶対越えられないと思ってたものが呆気なく通れてしまって驚いた。
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