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第214話
(秋哉side)
俺は微かに笑う緋桜を見て、大きくため息をついてしゃがみ込んだ。
急にしゃがみ込む俺に緋桜が驚く。
「秋哉!?どうしたんだ!?」
こんなことにも嫉妬するなんて、本当自分が嫌になる。
ずっと緋桜の笑顔が見たいと思ってた。
少しでも笑ってくれたらと思ってた。
でも、いざ緋桜が笑ってるのを見たら、やっぱり俺が笑わせてやりたかったと思った。
「…しゅ、秋哉?」
チラッと緋桜を見ると、緋桜はいまだにしゃがみ込んでる俺をどうしたら良いのか分からなくてオロオロとしてる、
そんな緋桜を見て、思わず笑ってしまった。
「秋哉」
しばらく笑ってると、緋桜から少し低めの声が聞こえてくる。
見ると緋桜はムスッとした顔をしていた。
「…急にしゃがみ込むから心配したのに」
「ごめんって」
ムスッとしてそう言う緋桜に俺は謝った。
「……で、どうしたの?」
まだ不貞腐れた顔でそう聞いてくる緋桜に、俺は少し困った。
もう居ない人に嫉妬するなんてカッコ悪過ぎる。
「……何でもないよ」
そう言って笑って見せるけど、緋桜はじっと見てくる。
何とか誤魔化せないかと思ったけど、じっと見てくる緋桜に言うまで見逃してくれないなと思った。
俺はため息をついて、顔を手で覆った。
「……拓真に嫉妬した」
顔を手で覆ったまま、呟くように言う。
「…え?」
指の隙間からチラッと緋桜を見ると、口を開けてポカンとしている。
だから言いたく無かったのに……
「……何で拓真に嫉妬したの?」
呆れられると思ってたけど、緋桜は逆に興味津々とでも言うような顔で聞いてくる。
呆れられなかったのは良いけど、それはそれで困る。
どうしようかと思って緋桜を見ると、緋桜が俺を見てる事に気付いた。
さっきまで緋桜の目には俺が映ってなかった。
俺の入り込む余地なんてなかった。
でも今は俺を見てくれている。
嬉しいようなくすぐったいような、不思議な感じがした。
カッコ悪いとか、もうそんなのどうでもいい。
そう思った。
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