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第217話
「……え?」
「中村って今は秋哉のとこに居るんだろ?」
……あ……そのこと…
佐倉先輩に家の事を聞かれて、一瞬ドキッとした。
実家の事を聞かれたのかと思った。
「…秋哉のとこに居るっていうか……」
俺は秋哉を見ると秋哉も俺を見ていて、見合う形になった。
「中村って確か一人暮らしだったよな?」
「…え…ぁ…はい」
じっと見てくる先輩に、俺は少し退いてしまう。
そんな俺に先輩はクスッと笑った。
「そんなに身構えるなよ」
そう言って先輩は俺の頭をワシャワシャと撫でる。
「ちょっと気になって聞いただけだから」
『気にするな』と言って先輩は笑った。
帰り道、俺は先輩の言葉が気になっていた。
秋哉と付き合うようになってから殆ど帰って無かったし、緋方のことがあってからは一度も帰ってない。
なんか当たり前のように秋哉のとこに居るけど、それってすごい迷惑なんじゃ……?
……俺……出てった方が………………
「出てくなんて考えてないよね?」
そう思った瞬間、秋哉にそう言われて体が揺れる。
秋哉を見ると、秋哉は少し怒った顔をしていた。
「…ぁ…でも……迷惑…」
俺がそう言うと、秋哉が小さくため息をつく。
その後フッと笑った。
「緋桜の事、迷惑なんて思ってないから、出ていこうなんて考えないで」
「……でも」
本当にこのまま秋哉の家に居てもいいのか分からない。
迷惑になってないって秋哉は言ってくれるけど、負担にはなる。
秋哉の負担にはなりたくない。
「…そうだったね、緋桜にはちゃんと言わなきゃいけなかったね」
俺はそう言う秋哉を恐る恐る見る。
目が合うと、秋哉はクスッと笑った。
「なんかなし崩しになっちゃってたけど、俺はこれからも緋桜と一緒に居たい。同じ空間で緋桜と一緒に色んな事を見たり、感じたりしたい。だから、俺と一緒に暮らそう」
そう言って秋哉は俺に手を伸ばす。
秋哉に迷惑を掛けたくない。
秋哉に負担を掛けたくない。
でももう自分の気持ちに嘘はつきたくない。
「……俺も、秋哉と一緒に居たい」
そう言って俺は、差し伸べられた秋哉の手を握った。
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