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第228話
(秋哉side)
緋桜の実家に行く当日、緋桜は家を出る前から憂鬱な表情をしていた。
何か考え事してるかと思えば、大きくため息をつく。
緋桜は出掛けるってなると毎回表情が曇るけど、今回は気持ちが落ち込むのも分からなくはない。
「………緋桜、そろそろ押そうか」
緋桜の実家の前について、かれこれ30分くらい経った。
だいぶ前についてるにも関わらず、未だにインターフォンが押せてない。
緋桜の気持ちは分かるけど、このままだと日が暮れる。
「俺が押そうか?」
そう言って俺がインターフォンに手を伸ばすと、緋桜が慌ててそれを止める。
「ちょっ、ちょっと待って」
「でも緋桜、押せないでしょ?」
「……それは…そうだけど……」
「だったら…」
そう言って俺はもう一度インターフォンに手を伸ばす。
そうすると、緋桜がまたそれを止めてきた。
そんなやり取りを数回繰り返していると、突然カチャっと玄関のドアが開いた。
突然ドアが開いて、二人して一瞬固まる。
家の前でこれだけ騒いでれば、様子を見に出てきてもおかしくない。
出てきたのは女の人。
この人が緋桜のお母さん。どことなく緋桜に似てる。
「……どちら様ですか?」
その人は俺に向かってそう言う。
「…えっと……」
俺は緋桜が居た方を見ると、緋桜は玄関からは死角になってる場所にしゃがみ込んでいた。
ちょっ!?なんで隠れてるの!?
「……あの?」
誰か聞かれて答えない俺に、緋桜のお母さんは不信感を見せる。
流石にこの状況に俺も焦った。
「えと、俺は緋桜……くんの高校の友人で木崎と言います」
「……緋桜の?」
緋桜の名前を出すと一瞬反応するものの、俺への警戒は緩めない。
まぁそれも当然か。
見ず知らずの人がいきなり家に来て、息子の友人だって言われても信用するはずがない。
ましてや緋桜のお母さんから見たら、俺は今一人だ。
警戒するなって方が無理だよな。
そう思って、俺は小さくため息をついた。
「…ねぇ、いい加減出ておいで?」
俺は物陰に隠れてる緋桜に向かって声を掛ける。
そう言う俺に緋桜は首を振る。
「ほら、大丈夫だから」
俺は抵抗する緋桜の腕を掴んで物陰から引っ張り出した。
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