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第231話
(秋哉side)
「さっきはごめんなさいね」
緋桜のお母さんは、俺の前に飲み物を置きながらそう言って笑う。
「いえ、大丈夫ですよ」
俺もそう言って緋桜のお母さんに笑い返した。
緋桜のお母さん、名前はゆかりさん。
やっぱりどことなく緋桜に似てる。
最初は俺の事を警戒してたゆかりさんも、緋桜が紹介してくれたお陰で信用してくれた。
「じゃあ秋哉くんは一年生で生徒会長なのね?」
『すごい』とゆかりさんが少し大袈裟にリアクションする。
「緋桜も書記をしてますよ」
俺がそう言うと、ゆかりさんは更に驚いた顔をした。
俺はゆかりさんに学校での緋桜の事を聞かれて色々話していた。
緋桜はというと、話には加わらずに出されたチョコレートケーキを食べていた。
表情からして美味しいんだろう。
緋桜の好みを分かってるあたり流石だと思う。
「……でも良かった」
ゆかりさんはそう言って、ホッとした表情を見せる。
「緋桜は人付き合いが苦手だから、高校で大丈夫なのか心配だったの」
そう言って安心した様子を見せるゆかりさんに、俺は少し複雑だった。
緋桜が人付き合いがまともに出来るようになったのはここ最近だ。
それでもまだ慣れてなくてぎこちない。
本当はゆかりさんには今までの事を話しておいた方が良いのかもしれないけど、折角和解出来ていい雰囲気なのを壊したくない。
それに必要だと思ったら、多分緋桜が自分で言うと思った。
「ところで緋桜、今日はこの後どうするの?」
ふと、ゆかりさんが緋桜に向かってそう聞く。
「……え?」
緋桜は戸惑ったように俺を見た。
結局俺たちは、その後夕飯をご馳走になって流れで泊まる事になった。
夕飯を食べた後もゆかりさんと話をした。
緋桜のお父さんは今日はどうしても抜けられない仕事があるらしく帰って来れないらしい。
緋桜が帰って来ることを伝えたら悔しがってたとゆかりさんが笑いながら言ってた。
緋方は全寮制の学校に通ってるから、元々この家にはいないらしい。
正直、緋方と顔を会わせることがなくてホッとした。
色々話していたら、時間も時間で俺たちは緋桜の部屋に移動した。
緋桜が家を出てからそのままにしてたらしい。
でもゆかりさんが定期的に掃除をしてたみたいでキレイだ。
ベッドに机、小さめの本棚。
シンプルで緋桜の部屋らしい。
ベッドの横にはゆかりさんが敷いてくれた来客用の布団があった。
俺たちはベッドに座ると、少し話をした。
緋桜はまともにゆかりさんと話が出来たことが嬉しかったみたいで、時折笑顔を見せていた。
しばらく話してると、緋桜がコテンと凭れ掛かってくる。
見ると緋桜は寝息をたてていた。
俺は寝てしまった緋桜をベッドに寝かせる。
今日は疲れたんだな。
そう思って俺は緋桜の頭を撫でる。
緋桜は実家に帰ると決めてから、ずっと気を張ってた。
そのせいであまり眠れてなかったみたいだった。
俺は緋桜の寝顔を見てフッと笑みが溢れる。
「お疲れ様」
そう言って俺は、緋桜の額にそっとキスをした。
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