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第233話

(ゆかりside) そんな気はしてた。 なんて言うか、二人の雰囲気が友人以上だと思った。 秋哉くんに聞いてみたら、秋哉くんは誤魔化すことなく正直に話してくれた。 緋桜と付き合ってること。 真剣なのも伝わってきた。 だからこそ、心配だった。 秋哉くんが緋桜の事を知ったら秋哉くんは緋桜から離れていくんじゃないかと思った。 緋桜は今までそれで何回も傷付いている。 何回も隠れて泣いてるのを知ってる。 いつ頃からか、緋桜は人を寄せ付けなくなった。 人と接することを諦めてしまった。 そんな緋桜がまた人と接するようになったと聞いて嬉しかった反面、怖くもあった。 緋桜がまた同じような思いをするんじゃないかと思った。 だから秋哉くんに緋桜の事を話しても良いのか迷った。 話しておいた方が良いと思ったけど、それを話すことによって本当に秋哉くんが離れていってしまったら? また緋桜が傷付いてしまう。 もう緋桜にあんな思いはさせたくなかった。 「大丈夫ですよ。知ってますから」 そう言って秋哉くんは微笑む。 「……え?」 「これからゆかりさんが話そうとしてる事。 緋桜が周りから『疫病神』と呼ばれてた事、友人の事故の事、火事の事も全部知ってます」 「……知ってる、の?」 「はい」 秋哉くんが緋桜の事を知ってる事に驚いた。 話を聞くと、緋桜が話したみたい。 緋桜はそんなにも秋哉くんの事を信頼してるんだ。 「でも安心しました」 そんな事を考えていると、そう秋哉が呟く。 「え?」 「緋桜から両親の話を殆ど聞かなかったので、失礼ですけどあまり良い印象が無かったんです」 『蟠りがあることは知ってたので』と秋哉くんは困ったように笑いながら言う。 「でも今日会ってみて、そうじゃないと分かりました」 「……緋桜が私たちの事を話さなかったのは、私たちを嫌ってるから」 私がそう言うと、秋哉くんは首を傾げる。 「緋桜は嫌ってなんかないですよ?」 「え?」 「緋桜はゆかりさんたちが好きだから離れる事を選んだんです」 秋哉くんの言葉に驚いた。 「…あなたは緋桜の事をよく分かってるのね」 「当然です」 そうキッパリ言う秋哉くんに、思わず笑ってしまった。 秋哉くんとしばらく話していると二階からガタンと音がして、パタパタと階段を降りてくる足音が聞こえる。 なんだろうと思ってると、秋哉くんが『ちょっとすいません』と言って立ち上がった。 どうやら緋桜が起きてしまったみたいで、それに気付いた秋哉くんが急かさず様子を見に行った。 緋桜も秋哉くんの姿を見るなり、秋哉くんにくっいて嬉しそうに笑った。 緋桜の事が心配だったけど、どうやら私の取り越し苦労だったみたいね。 二人を見てたら、お互いがどんなに大切に思ってるのか分かる。 だって、私は緋桜のあんな笑顔、一度も見たことなかったから。

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