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第234話

目を覚ますと、秋哉が居なかった。 トイレにでも行ったのかなと思ったけど、いつまで経っても秋哉は戻ってこなかった。 俺は不安になって、秋哉を探すために部屋を出た。 「緋桜」 階段を降りてると、リビングから秋哉が顔を出す。 俺は秋哉に駆け寄ると、秋哉の服を掴んだ。 秋哉の胸に額をつけると、秋哉の体温が伝わってきてホッとした。 「どうしたの?」 そう言って秋哉は俺の頭に手を置く。 「…起きたら秋哉が居なくて、待っても戻ってこなかったから……どっか行っちゃったんじゃないかって……」 「そっか、ごめん」 そう言って秋哉は俺の頭を撫でた。 「ごめんなさい、秋哉くん私と話をしてて遅くなったの」 リビングから母さんが顔を出して、俺は秋哉にくっついてることに気付いて慌てて離れた。 すると母さんが何故かクスクスと笑う。 俺は何で笑ってるんだろうと思って首を傾げた。 「さぁ、もう遅いし部屋に戻りなさい」 そう言って母さんは俺と秋哉の背中を押す。 そんな母さんに秋哉がクスッと笑う。 「じゃあ戻ろうか」 そう言って秋哉が俺の手を取る。 俺は訳が分からないまま、ただ頷いた。 「……母さんと何話してたんだ?」 部屋に戻って、ベッドに座る秋哉に聞きながら俺も秋哉の隣に座る。 「んー?緋桜の事と、俺たちの事」 「え?俺たちの事…話したの?」 「うん、ゆかりさん俺たちの事は気付いてたみたいだし、俺がここに来た目的は元々それだったからね」 「………母さん、何か言ってた?」 母さんは俺たちの事を知ってどう思ったんだろう。 「俺たちが付き合ってるって事より、緋桜が誰かを好きになってくれたことが嬉しかったみたい」 「え?」 「ゆかりさんは緋桜の事が心配だったみたい。俺に緋桜の事を話そうとしてたし、緋桜に辛い思いさせたくなかったんじゃないかな」 『緋桜との事を聞いてきた時のゆかりさんは少し怖かった』って秋哉は苦笑混じりに言った。 「……そっか」 母さんは俺の事、ずっと無関心だと思ってた。 でも本当はそうじゃなかった。 ずっと俺の事を気に掛けてくれてた。 俺はそれが、ちょっと恥ずかしいと思う反面、嬉しかった。

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